自民党総裁選の討論会が各地で開催されているが、そこでの議論は内向きで、米国の一流大学を出た候補者が多いにもかかわらず、気候変動をはじめとした地球規模の課題に言及する候補はほとんどいない。脱炭素ビジネスで中国が伸びていく中、日本をどう舵取りしていくのか、深い議論が求められる。(山中 俊之:著述家/コラムニスト)
自民党総裁選挙の演説会やテレビ等での討論会が全国各地で開催されている。事実上の総理大臣を選ぶ選挙であるため、様々な地域で多くの質問を受ける形で演説や討論がなされることが望ましいことは言うまでもない。同じテーマを議論するにしても、東京で行うのと、沖縄で行うのとでは違ってくるはずだ。
テーマは、「政治とカネ」「経済政策」「外交・安全保障」「選択制夫婦別姓」など多岐にわたる。いずれも大事なテーマであるが、いずれも国内の課題であるか、日本起点の議論である。
「日本の総理大臣を選ぶ選挙なので、国内の課題や日本起点の議論でどこが悪いのか」という指摘もあるかもしれない。しかし、経済ビジネスはグローバル化して、地球規模の課題は噴出している。
候補者から、日本目線の外交・安全保障についての意見を聞くことはあるが、世界や地球のあるべき姿を聞くことは少なくとも私が各種報道を確認する限り稀だ。世界がどうあるべきか、どうしたいのかについての議論はあまり聞かない。
候補者の1人である小林鷹之氏は、「世界をリードする国にしたい」と語っているが、リードをして世界に一体どんな変革をもたらしたいのであろうか。
今回の候補者の中には、米国の著名大学で修士号などを持っている候補者が、茂木氏、上川氏、林氏、小林氏(以上ハーバード大)、河野氏(ジョージタウン大)、小泉氏(コロンビア大)と6人もいる。稀に見る著名大学出身者たちの出馬である。
米国の一流大学で世界水準の教授や学生たちと議論をしてきたはずの候補者であるが、議論は実に内向きだ。選挙区で有権者の支持を得るため、他の国会議員の支持を得るため内向きになることは、政治の宿痾と言えるかもしれない。世界で戦っているビジネスパーソンとの認識ギャップは開くばかりではないか。
内向きの議論の中で、特に気になるのが、脱炭素など地球環境問題への言及の少なさである。