脱炭素における中国との向き合い方

 第一に、日本は周回遅れであることを強く認識すべきである。

 脱炭素社会への移行について日本は周回遅れと言ってもいい状況で、自民党総裁選の議論のテーマにすらならない。

 確かに、EV車の販売台数は世界的に見て頭打ちである。しかし、プラグインハイブリッドを含めた環境にやさしい自動車の普及は世界的に見て喫緊の課題であることは間違いない。

 第二に、中国製の太陽光パネルを使うことは費用対効果によってはよいであろうが、地政学リスクや人権蹂躙などに注意することが大事である。

 太陽光パネルも風力関連製品については、中国企業に過度に集中しているとも言える。サプライチェーン上の課題があることは明らかである。

 また、新疆ウイグル自治区で生産された素材を使った太陽光パネルの使用は、投資家や消費者から批判される恐れがある。レピュテーションリスクを含めて、対応をしたい。

 太陽光パネル等における品質とコストを考慮すると中国優位は動かしがたく、中国製の製品を受け入れることは必要なことも多いであろう。一方で、地政学リスク、人権蹂躙リスクもある。

 脱炭素について、中国とは離れず、くっつかずの対応が望まれると思う。

山中俊之(やまなか・としゆき)
著述家/芸術文化観光専門職大学教授

 1968年兵庫県西宮市生まれ。東京大学法学部卒業後、1990年外務省入省。エジプト、イギリス、サウジアラビアへ赴任。対中東外交、地球環境問題などを担当する。首相通訳(アラビア語)や国連総会を経験。外務省を退職し、2000年、日本総合研究所入社。2009年、稲盛和夫氏よりイナモリフェローに選出され、アメリカ・CSIS(戦略国際問題研究所)にて、グローバルリーダーシップの研鑽を積む。
 2010年、企業・行政の経営幹部育成を目的としたグローバルダイナミクスを設立。累計で世界96カ国を訪問し、先端企業から貧民街・農村、博物館・美術館を徹底視察。ケンブリッジ大学大学院修士(開発学)。高野山大学大学院修士(仏教思想・比較宗教学)。ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA、大阪大学大学院国際公共政策博士。京都芸術大学学士。コウノトリで有名な兵庫県但馬の地を拠点に、自然との共生、多文化共生の視点からの新たな地球文明のあり方を思索している。五感を満たす風光明媚な街・香美町(兵庫県)観光大使。神戸情報大学院大学教授兼任。
 著書に『世界94カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 世界5大宗教入門』(ダイヤモンド社)。近著は『世界96カ国をまわった元外交官が教える 外国人にささる日本史12のツボ』(朝日新聞出版)。