(舛添 要一:国際政治学者)
アメリカでは、大統領、上院に並んで、下院も共和党が制することになった。再選されたトランプは、早速人事に取りかかっているが、政策的に自分に近い人物で固めつつある。
対中強硬、不法移民締め出し
最初に指名されたのが、大統領選で選対本部長を務めたスーザン・ワイルズで、女性初の大統領首席補佐官となる。
政府効率化省のトップにイーロン・マスクが、大統領戦に立候補した実業家のビベック・ラマスワミと共に起用された。予算削減などに辣腕を振るうという。
国務長官にマルコ・ルビオ上院議員、国家安全保障担当大統領補佐官にマイケル・ウォルツ下院議員、国防長官にFOXニュース司会者のピート・ヘグセス、国土安全保障長官にクリスティ・ノーム・サウスダコタ州知事、国連大使にエリス・ステファニク下院議員、などである。
ルビオ、ウォルツ、ステファニクは対中強硬派である。ルビオは中国政府による制裁対象となっている。
ルビオについては、NATOを重視していることは注意しておいてよい。彼は、昨年12月に、上院議員の3分の2の同意を得ずに大統領がNATOを離脱することを禁ずる国防権限法を民主党のティム・ケイン上院議員とともに超党派で成立させている。その点では、トランプの暴走にブレーキをかけたことになる。
不法移民に対して厳しい措置を求めるトランプは、ノームの他に、ホワイトハウスの政策担当次席補佐官にスティーヴン・ミラーや不法移民強制送還の責任者にトーマス・ホーマン元移民・関税執行局長を選んでいる。
さらに、司法長官にはマット・ゲイツ下院議員、CIA長官には元下院議員のジョン・ラトクリフが選ばれたが、トランプの訴訟問題の解決を期待されている。
以上の布陣を見ると、貿易戦争、とくに中国との戦いを意識した人事である。また、不法移民対策も強硬派で固めている。選挙戦中の公約を実現するという姿勢が明確に見て取れる。
しかし、ヨーロッパや中東にどう対応するのかは、人事面ではまだはっきりとは見えてこない。