日本とドイツ
この中国の経済発展と対照的なのが、日本とドイツである。
日本は「失われた30年」からまだ完全には脱却していない。
ドイツは、安価なロシアのエネルギー、広大な中国市場を活用した成長戦略を続けることが不可能になった。脱原発、再生エネルギー優先のエネルギー戦略も経済成長の阻害要因になっている。
そのようなときに、トランプ再選という災難が降りかかってきた。トランプは同盟国に対して防衛費の増額を要求する。トランプが、早期停戦を求めてウクライナ支援を控えるならば、ヨーロッパ諸国がその分支援を増やさざるを得なくなる。つまり、ヨーロッパ、とくにその主軸であるドイツは、国債を発行してでも財政出動を増加させねばならない。
しかし、ショルツ連立政権の一翼を担うFDP(自由民主党)は財政規律重視の政党である。そのFDPに属するリントナー財務大臣は、債務ルールを緩和することに反対であり、前回の本コラムで解説したように、ショルツ首相と激突して解任された。米大統領選でトランプが勝った直後である。
(参考記事)「トランプ再来」はゼレンスキーにとって悪夢、「24時間で戦争終結」に動き出せば欧州の安全保障体制にも激震(JBpress:2024年11月9日)
その結果、SPD(社会民主党)、緑の党、FDPからなる連立政権は崩壊し、来年2月に解散総選挙となりそうである。連邦議会選挙が終わり、次の政権が誕生するまでのこの数カ月間、ドイツでは政治的空白が続くことになる。トランプ政権が始動して、新たな政策を実行しても、ドイツは直ちには対応できない状況に陥りそうである。
日本についても事情は同じで、貿易、防衛などの分野でアメリカからの圧力が高まっても、少数与党政権である以上、石破政権がそれに的確に対応できないことになりかねない。そうなれば、日米関係の亀裂という要因から石破退陣要求が強まる可能性もある。
トランプ第二次政権の発足に伴う世界の混乱に加えて、日本とドイツというアメリカの忠実な同盟国の政治的不安定も懸念材料である。フランスについても、マクロン政権は盤石ではない。プーチンの高笑いが聞こえそうである。