1.兵器技術やバイブリッド戦でも敗北
ロシア軍がウクライナに侵攻して14か月以上が経過した。
この間、ロシア軍の兵器は、米欧製のジャベリン対戦車兵器、HIMARS(長射程精密誘導ロケットシステム)、スイッチブレード自爆型無人機などの兵器によって、木っ端微塵に破壊されている。
ロシア軍が、戦力で圧倒的に優勢だったにもかかわらず勝利できない大きな理由の一つは、報道にもあるように兵器の性能が劣っていることだ。
また、脅威であると見られていたロシア軍の電子戦やサイバー攻撃などを含めたハイブリッド戦も、ことごとく見破られて、ウクライナ軍の防御的措置がとられた。
ウクライナ軍に勝利できないもう一つの理由である。
2.戦争目的や目標を達成する覚悟なし
米国の研究所などの情報をまとめると、ロシアの戦争戦略では、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領の政権を崩壊・屈服させウクライナをロシアの傀儡政権の国家にしたいという目的があった。
そして、短期間にウクライナの全域あるいは首都を占領しようという戦争目標があったと考えられる。
このための軍事作戦として、ベラルーシを含めたロシアとウクライナが接する国境の全域から攻撃を行った。
作戦が上手くいくと想定した場合、ウクライナ全域を占領するというのであれば、両国の国境線約2000キロの全正面から同時攻撃するのは、当然採用される作戦だと考えてよいだろう。
全域を占領する作戦が、上手くいかない可能性が高い場合の案としては、次の3つのうち、①~③の順に優先順位を決めて作戦することであったはずだ。
①政権を転覆するためにキーウを占領する。
②ロシア領内からクリミア半島までの回廊を確保する。
③ドンバス地域を完全にロシア領にする。
しかし、②と③だけでは、戦争目的・目標の達成とはならない。
ロシアは、キーウ侵攻作戦が失敗に終わったため、早々に①を諦め、②クリミア半島までの回廊の確保と③ドンバスをロシア領にする作戦を採用した。
これは、ロシア軍の現実的な戦力から判断すれば、やむを得ない判断だったのかもしれない。
だが、この案を採用しても戦争目的・目標は達成されず、ウクライナの現在の政権が存続する間は、徹底的に抗戦される可能性は残ると考えたはずだ。
ロシアは、キーウを占領することを諦め、ウクライナ政権の息の根を止めることに集中しなかったのだ。
これが、ロシアが苦戦に至る遠因となった。
今、振り返ってみると、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は戦争目標であるキーウを早期に占領し、ゼレンスキー政権を潰して戦争を終結させるために、ロシア軍のすべての戦争手段を投入しなかった。
その覚悟がなかったことが致命的であった。