米韓、日米韓の合同軍事演習は北朝鮮にとって大きなストレスだ(写真は東シナ海で日米韓の合同軍事演習に参加した米ミサイル駆逐艦の「ウェイン・E・メイヤー」、4月4日、米海軍のサイトより)

 これまでの各種ミサイルと核の実験成功によって、北朝鮮の米韓合同軍事演習(米韓演習)への対応が変わった。

 金正日総書記の時代には、米韓軍の侵攻を恐れ防御態勢に移行していたが、今は奇襲攻撃能力を見せつけるようになったのだ。

1.米韓演習への対応の変化の背景

 米韓軍は、3月20日から4月3日までの間、北朝鮮への上陸と内陸部に向けた進撃を想定した米韓演習「双竜訓練」を実施した。

 文在寅政権が中止していた実動演習(部隊が兵器を運用しつつ、想定に基づき行動する演習のこと)を5年ぶりに再開したのだ。

 演習を中止していた過去を振り返り、北朝鮮の反発はどうだったのかを見てみよう。

 1992年に北朝鮮に非核化の動きがあり、合同演習はいったん中止されたことがあった。

 だが、北朝鮮がIAEA(国際原子力機関)の査察を拒否し、演習は復活した。

 文在寅政権の時は、南北合意など融和ムードがあり、北朝鮮を強く刺激する実動演習だけは中止されていた。

 北朝鮮は、一時的に非核化宣言を行っても、南北融和が進んでも、また米韓演習を中止・縮小しても、核・ミサイル開発を止めることはなかった。

 北朝鮮による米韓演習に対する非難のトーンは変わっても、軍事的脅威は飛躍的に高まっているのが現状だ。

 米韓演習への対応が変化しているのは、劣勢であった軍事力から核ミサイルの開発によって勝利できる戦力へと変化したことが背景にある。

 また、今、ロシアのウクライナ侵攻の影響も少なからず受けている。

 北朝鮮の米韓演習への対応、その背景となった戦力増強および軍事戦略の変化について考察する。