ウクライナ軍の反撃を予想するにあたって、最近までのウクライナ軍とロシア軍の戦いを振り返って、確認する必要がある。
侵攻開始から7~9か月のロシア軍の戦車の損失は継続的に多かった。これらは、侵攻初期、ハルキウ正面やへルソンでの機動的な戦いの結果だ。
ところが、開始から10か月から現在までは、ロシア軍が塹壕内に入り防御態勢に移行した。一方のウクライナ軍は戦力回復に力をいれたためか、ロシア軍戦車の損失は大幅に減少しているのだ。
ロシア軍戦車の月毎の損失推移
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ウクライナ軍は9~10月北東部のハルキウ~イジューム~リマンを、11月へルソンを奪還。
その後、ウクライナ軍主力は引き続き攻撃する様子を見せつつも、深追いせずに攻撃を停止していた。
ウクライナ軍は、疲労した戦力を回復し、反撃準備に取り掛かっていたからであろう。
一方、ロシア軍はバフムート周辺、ドネツク市西部郊外、ドネツク州西部で攻撃作戦を継続するものの、ウクライナ軍に撃退され、その成果は極めて小さかった。
その他の地域に配置されているロシア軍は塹壕を掘り、防御態勢に転換した。
ウクライナ軍は、深追いするとロシア軍の罠にはまる可能性があることを恐れ、概ね接触線を維持していた。
ロシア軍の戦い方について、米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は2月14日、ロシアがウクライナでの戦争で「戦略的、作戦的、戦術的に負けた」という認識を示した。
つまり、両軍の戦略・戦術において、ロシア軍にはそれがなく、一方、米欧が支援するウクライナ軍は優れているということなのだろう。
米国のロイド・オースティン国防長官は同日、「ウクライナは勢いをつけようとしている、春には攻勢を開始するだろう」という見方を示した。
私は、この2人の発言には「これからの戦いでは、ウクライナ軍は予想できない奇襲戦略(攻撃)があるよ」ということを含んでいると思う。
そこで、ウクライナ軍はこれからどのような戦い方をするのかを考察する。