ロシア軍の航空機にとって脅威となる米軍供与の携帯型地対空ミサイル「スティンガー」(4月17日フィリピンの米軍基地で撮影、米海兵隊のサイトより)

1.反転攻勢直前のロシア軍実態

 ロシア軍の冬季攻勢では、3月31日までにドネツク州とルハンシク州の境界線まで占領するというクレムリンの目標を達成できなかった。

 現在、ロシア軍の攻勢はドネツク州のバフムトに集中している。

 バフムト以外のドネツク州やルハンスク州での攻勢は、低調かあるいは停止している。

 特に、ドネツク州西部から、ザポリージャ州、へルソン州のロシア軍は、完全に防勢に転移している。

 ウクライナ参謀部の発表を参考にして、侵攻から14か月後のロシア軍の損耗等を算出すると、戦車と装甲戦闘車の損耗率は約65%に達する。

 台数では1万6400両から残り5500両になった。

 火砲(迫撃砲を含む)と多連装砲も合わせて約90%の損耗率で3840門から残り450門となっている。

 最も大きな損害を受けているのは火砲等であり、弾薬も少なくなってきている。

 戦車・歩兵戦闘車は侵攻前の3分の1になったとはいえ、まだ約5500両を保有している。だが、ウクライナ正面約700キロの前線を守るには足りない。

 仮に戦車・歩兵戦闘車を等間隔で並べたとしたら、125メートルに1両の配分になる。

 実際は、地形の状況に合わせて、ウクライナ軍の可能行動を見積もって配備されている。

 兵員の損失は約19万人だ。この中に、戦いに慣れた指揮官や古参兵が多く含まれる。

 これらの部隊は、その部隊名は存在しているものの、訓練が不十分な新兵の充足を受けただけで、兵器は保管の一部や製造できた量だけを補充されている状態だ。

 それぞれの部隊は、3分の1の戦力になっていて、士気も低下し、もはや敗残兵に近いと見てよいだろう。