尹錫悦大統領(写真:AP/アフロ)

弾劾案不成立でも不安定化する政権運営

 尹錫悦大統領に対する弾劾案は、7日の韓国国会の本会議で定足数不足のため不成立となった。弾劾に反対の方針を決めた「国民の力」議員が本会議場から退場し、弾劾議決に必要な200議席に満たなかったためだ。

 これで尹大統領と国民の力はひとまず時間を稼いだわけだが、共に民主党は弾劾案が国会を通過するまで毎週弾劾案を発議するとしているだけに、国民の力が最後まで弾劾を防ぐのは難しいかもしれない。

 現在、国民の力は、尹錫悦大統領の職務を直ちに停止させ、韓悳洙(ハン・ドクス)首相と国民の力が協力して国政を主導しつつ、次期大統領選挙に向けたスケジュールを組む方向で戦略を立てている。8日午前、韓東勲(ハン・ドンフン)国民の力代表は対国民談話を通じて「尹錫悦大統領が職から退くべきだというのが国民多数の判断」としながらも、「秩序ある退陣で混乱を最小化する」として、弾劾ではなく「辞退」に誘導する意向を明らかにした。

 一方、共に民主党は韓悳洙首相の大統領職務代行は「第2の内乱」と批判、無条件に弾劾を押し付けると主張している。毎週土曜日に弾劾案の採決が行われるようにし、そこで国民の力が弾劾案を否決させる姿を生中継で国民に見せつけ、国民の怒りのボルテージを引き上げていこうという戦略だ。そうなれば、次第に国民の力の議員は「保守支持者たちの機嫌ばかりうかがっていては中道層にまで見捨てられかねない」という危機感を持つことになるだろう。最終的には、弾劾賛成へと次々と寝返っていくかもしれない。