韓国・尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による非常戒厳(戒厳令)の宣布騒動をめぐり、尹大統領の弾劾が現実味を帯びてきた。6日、野党勢が提出した弾劾訴追案に、与党「国民の力」の韓東勲(ハン・ドンフン)代表が賛成する意向を表明。弾劾が可決され、大統領選が実施された場合、最有力候補は最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表になると見られる。李氏とはいったい、どんな人物か。
(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)
韓国との関係が大幅に改善していた日本にとっては、青天の霹靂だろう。
尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が11月3日夜に「非常戒厳」を宣布したが、わずか6時間で解除された。その後、韓国では尹降ろしが怒涛の勢いで繰り広げられている。
最大野党「共に民主党」をはじめとする野党6党は4日、尹大統領の弾劾訴追案を国会に提出した。その評決が7日の夕方以降に行われる見込みだと韓国メディアは報じている。
一方、与党「国民の力」は当初、7日の評決に参加しないことを表明した。国会での弾劾案を可決するには、総議席数300のうち200以上の賛成を得なければならない。だが、現在の野党の総数は192議席で、与党から8人の議員の造反が必要だった。
弾劾を実現するには野党勢は何としても与党議員を引きずりださなければならないが、共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表はブルームバーグとのインタビューで「今回の可決は困難な可能性がある」との認識を示していた。
ところが、6日午前9時半に開かれた記者会見で、国民の力の韓東勲(ハン・ドンフン)代表は今回の件について、大統領自身が失政だと認識しておらず、このまま政権が維持されるのは極めて危険だと指摘。そのうえで、いまは国民のことを考える時期であり、「尹大統領の職務執行停止が必要」と表明。事態は一気に弾劾に向けて動き出した。
韓国では弾劾訴追案が国会で可決されると、180日以内に憲法裁判所がその妥当性を判断。それが認められて罷免されると、60日以内に大統領選挙が行われる。
その場合、次期大統領の最有力候補は、最大野党代表の李在明氏だ。
李氏は、いったいどんな人物か。