3.ロシアはなぜ射程の長い火砲が欲しいのか
ロシアの火砲には、最新型の「2S35 コアリツィヤ-SV 152ミリ自走榴弾砲」(最大射程は精密誘導砲弾で70キロ、通常弾でも40キロ)があるが、その保有数量はたったの8両である。
戦線で精密誘導砲弾が使用された、あるいはこの火砲が破壊されたという情報がないので、現実には使用されてはいないと考えてよいだろう。
ロシアは、この火砲を大量に生産して戦場に送り込みたいのだろうが、できない事情がある。おそらく、精密誘導の技術が完全に成功していないからだろう。
ロシアが近年、大量に生産し、この戦争の映像でも多く出現したのが主力の火砲である「2S19ムスタ-S 152ミリ」だ。
この自走榴弾砲は、最大射程が通常弾の場合24.7キロ、噴進弾では36キロである。弾の種類には、長距離精密誘導砲弾はない。
そのため、この通常砲弾は1つの建物、防空兵器や火砲などの目標に命中させることはできない。
したがって、10キロ離れたそれらの目標に向けて、これらを発射したとして、500メートル前後離れて落下しても当然のことである。
一方、米欧がウクライナに供与している「155ミリ長距離精密誘導砲弾M982 エクスカリバー」は墳進弾機能を持ち40~57キロ飛翔し、滑空翼とGPS誘導により直径10~40メートルの円の中に、2発発射すれば1発は入ることができるものだ。
ロシアの火砲や防空兵器が破壊されているのは、ほとんど自爆型無人機とこの砲弾によるものだ。
155ミリ長距離精密誘導砲弾M982 エクスカリバー
ロシア155ミリ・北朝鮮170ミリの噴進弾とウクライナエクスカリバー弾の射程比較
ロシアはこの劣勢を補うために、精度は悪くてもエクスカリバーと同じ射程を持つ火砲が必要なのである。
それが、北朝鮮の170ミリ榴弾砲と240ミリ多連装砲なのである。