英国の高級自動車ブランド、アストンマーティンの最新モデル「DB12」を、都心を起点に約100km試乗した。日本では馴染が薄いアストンマーティンだが、近年はホンダF1との関係などもあり注目が集まっている。平日のドライブを楽しみながら、アストンマーティンの魅力に触れた。
(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)
そうだ、アストンに乗ってみよう。
クルマ好きの間では、アストンと呼ばれることが少なくない、英国アストンマーティン。 今回のお相手は、「DB12」である。試乗車の車両価格は3090万円。
ボディ寸法は、全長4725mm×全幅2135mm(ドアミラーを含む)×全高1295mm、ホイールベースは2805mm。外装色は、イリデッセントエメラルド。英国のレーシングカーをイメージさせるグリーンを基調とした明るくエレガントな印象だ。いかにもアストンらしい色彩である。
ドライバーズシートに座ると「おぉ、確かに相当違うな」と思わず声が出てしまった。
先代モデル「DB11」と比べて、センターコンソールの意匠とレイアウトが変わり、車内の上質感がさらに一段上がっている。
エンジンを始動すると、エキゾーストノート(排気音)やエンジン振動は決して派手ではなく、クルマ全体がエレガントさを維持したままだ。
データで見れば、排気量4LのV型8気筒ツインターボの最高出力は680馬力、最大トルクは800Nmというツワモノだ。トランスミッションは独ZF社製の8速AT。加速性能は停止状態から時速100kmまでが3.6秒、最高速度は時速325kmに達する。
むろん、こうしたハイパフォーマンスなクルマの性能を目一杯引き出すためには、公道ではないクローズドサーキット、または速度無制限区間があるドイツのアウトバーンにクルマを持ち込む必要がある。
だが、アストンマーティンに限らず、動力性能がハイパフォーマンスなモデルを所有する人の多くは、都心部での日常生活で使用したり、またはゴルフやレジャーでのショートドライブに出かけたりする中で、クルマと過ごす時間を楽しんでいる。
特にアストンマーティンDB12の場合、GT(グランド・ツーリング)を超えた「スーパーツアラー」という商品コンセプトがあるため、日常生活の枠内で「心の豊かさ」を満たすことを重視している。
実際、今回の試乗でもドライバーである筆者と、助手席の乗員のふたりにとって、心豊かなひとときを過ごすことができた。