8月後半、広島のマツダ本社1階に展示されていた、「アイコニックSP」赤ボディ車(写真:筆者撮影)
  • 8月後半、広島のマツダ本社を訪れた。1階にある展示スペースの先頭に、コンセプトモデル「ICONIC(アイコニック)SP」の姿。その後方にある「CX-5」や「MX-30」を、従えているような雰囲気がある。まさにマツダのイメージリーダー的存在だ。
  • アイコニックSPは今後、「RX-7」後継車として、例えば「RX-9」という名称で生産されるという見方が、自動車メディアの中では主流になってきている。なかには、2026年デビューを堂々と予測する大手自動車メディアもある。
  • 本稿では、「RX-9」登場の可能性をこれまで各方面への取材を基に改めて検証する。「はたして、マツダにいま、RX-9が必要なのか?」という視点で話を進めていきたい。

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 まず、アイコニックSP登場の経緯を振り返ってみたい。最初にその姿が示されたのは2022年11月のこと。「中期経営計画のアップデートと2030年に向けた経営の基本方針」の発表の際に紹介された動画の中で、「白い2ドアスポーツカー」として登場した。

 その際、「EV化された、次期ロードスター(仮称型式:NE)なのか?」という声がSNS上で拡散した。

 これに対してマツダ幹部らは「あくまでも将来のスポーツカーのイメージ。ロードスター、またはその他のスポーツカーとしてなど、様々なイメージで捉えてもらえればよい」と言うにとどめた。

 次の段階は、2023年8月末、マツダが報道陣向けに広島で実施した「MX-30 R-EV(ロータリーEV)」に関する事前説明会だ。新たに登場したロータリーエンジン「8C」の設計者らへの取材、部品加工や最終組立てラインの視察、そして実車の撮影などが行われた。

 その際、マツダ幹部らとは、ロータリーエンジンの「次の一手」についても、ざっくばらんに意見交換した。この時点では、対外的には「8CはあくまでもEVのバッテリー充電用の発電機」という位置付けであり、「MX-30 R-EV」は「そうした施策の入口」としていた。

 その上で、古くからロータリーエンジン開発に携わってきたエンジンニアらは、「従来の理論の通り、ロータリーエンジンは複数ローター化することで、音や振動を抑えることができるため、そうした方向での可能性も探っていきたい」という「夢」を語った。

 マツダ幹部も、エンジニアらが指摘した点については、「市場の声を聞きながら、将来の商品戦略を真剣に考えていくべき時期という気持ちがある」という表現していた。

 いま思えば、この時点で2ヶ月後だったジャパンモビリティショーで、マツダのイチオシとして「アイコニックSP」を登場させることが確定していた。これが「市場の声を聞く」という意味だったのだ。