- トヨタ自動車と独BMWが燃料電池車における提携関係を強化した。BMWは2028年に初の量産車の発売を目指す。
- 「究極のエコカー」とも言われる水素で走る燃料電池車については、日本でもこれまで国をあげて後押ししてきた。
- だが、研究段階から普及に向けたハードル、いわゆる「死の谷」をいまだに越えられていない。電気自動車(EV)が失速するなか、燃料電池車の未来は大丈夫なのか?(JBpress)
(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)
トヨタ自動車は9月5日、ドイツのBMWと「水素社会実現に向けた協力関係を強化」することで合意し、基本合意書を締結したと発表した。
両社は2011年12月に、中長期的な協力関係の構築に合意しており、燃料電池車(FCV:フューエル・セル・ヴィークル)についてもこれまで共同開発してきた。そのほか、スポーツカーについてはトヨタ「スープラ」とBMW「Z4」が事実上の兄弟車として企画されオーストリア国内で一貫生産されている。
今回の関係強化により、両社で燃料電池搭載の量産車を拡充する。第1弾は2028年にBMWが新型モデルを生産予定と、まだ少し先の話である。
なぜこのタイミングで、両社は関係強化に動いたのか?
その背景について考察する。
燃料電池車について説明すると、水素を燃料として自車で発電する電気自動車で、排出するのは実質的に水のみであるため、「究極のエコカー」とも表現される。
トヨタでは現在、「MIRAI」と、その基本ユニットを継承する「クラウンセダンFCEV」が量産されているにとどまっている。次の世代の燃料電池車について、トヨタは明確な時期やモデルについて公表していない。
これまで何度か「死の谷越え」に挑戦してきた燃料電池車だが、現状を見る限り、まだ死の谷を越えたとは言えない。
ここでいう「死の谷」とは、製品などが世に出る際、事業の資金不足や市場の動向によって研究開発の段階から本格的な量産に至らない様子を指す。
時計の針を少し戻そう。