JR千葉駅にほど近い市街中心部、千葉トヨタ本社屋内で開業した「THE CROWN 千葉中央」(写真:筆者撮影)
  • 「クラウン」専門店の「THE CROWN 千葉中央」が7月24日、JR千葉駅近くに開業した。
  • 当初から「THE CROWN」の展開には、「なぜ専門店が必要なのか」「レクサスと顧客を取り合わないのか」といった疑問が多かった。
  • そもそも、レクサスとは何が違うのか。素朴な疑問を改めて考えた。

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

「クラウン」専門店の「THE CROWN 千葉中央」が7月24日、JR千葉駅近くに開業した。「THE CROWN」はトヨタ自動車がクラウンブランドの再構築を狙う戦略の一環で、昨年10月に「横浜都築」と「福岡天神」の2店舗を開業。「千葉中央」は今年2月開業の「愛知高辻」に次いで4店舗目となる。

 オープニングセレモニーにはユーザーも参加した。出席したクラウンシリーズ・チーフエンジニアの清水竜太郎氏は、THE CROWの意義について「ブランド価値の向上」「お客様との接点づくり」「新たな体験価値提供」の3つを挙げた。そのうえで「これまでにない販売スタイルにチャレンジする」と意欲を見せた。

「THE CROWN 千葉中央」でのオープニングセレモニーのトークショー。クラウンの4つのラインアップについて説明するチーフエンジニアの清水竜太郎氏(左)とチーフデザイナーの宮崎満則氏(中央)(写真:筆者撮影)

 時計の針を少し戻すと、第16代目の新型クラウン発表に伴いクラウン専門店という構想が明らかになった際、ユーザー、トヨタ関連販売店、そしてメディアの中には懐疑的な声も聞かれた。クラウンはトヨタの新車を扱うどの店舗でも購入できるため、「専門店」という発想に違和感があったからだ。

 そもそもトヨタには、「トヨタ」「トヨペット」「ネッツ」「カローラ」と4つの販売店の系列があった。その中で、クラウンはトヨタ店で販売されてきたが、2020年からはすべての販売店で全車種を併売するようになっている。そうした状況で、どの店舗でも買えるクラウンになぜ専門店が必要なのか、という疑問だ。

 トヨタが車種別専門店を導入するのはTHE CROWNが初めてである。

 もうひとつの疑問が、トヨタ系高級店としてのレクサス店との関係性だ。

 トヨタ乗用車最上位のレクサスを専門に取り扱うレクサス店と、トヨタ最上級車種別専門店のTHE CROWNが顧客を奪いあう、いわゆるカニバリゼーションは起きないのか、という疑問だ。

 本稿では、こうした疑問について様々な角度から考察してみたい。

 まずは、なぜこのタイミングでTHE CROWNが必要だったか。