アフターマーケット市場のイメージ。東京オートサロンにて(写真:筆者撮影)
  • トヨタ自動車子会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント(TCD)が7月5日、不当な返品や金型保管料の未払いがあったとして、下請法違反で勧告を受けた。
  • 日産自動車の下請法違反と同様に「下請けいじめ」に当たるといった批判が目立つが、筆者はTCDが手掛ける改造・装飾パーツなどの「アフターマーケット」市場の特殊性を指摘する。
  • 違法と合法の狭間で発展してきた歴史的経緯などもあり、法令遵守の認識がTCDや取引先などの間で共有されていなかったのではないか。(JBpress)

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 トヨタ自動車の子会社、トヨタカスタマイジング&ディベロップメント(以下、TCD)は7月5日、公正取引委員会から下請代金支払遅延等防止法(以下、下請法)に基づく勧告を受けた。

 公正取引委員会とTCDがその事実を明らかにする前、一部報道でこの件がニュースになった。

 するとネット上では、日産自動車の下請法違反と同様の「下請けいじめ」であるといったコメントが目立つようになった。

   勧告を受けてTCDの西脇憲三社長が記者会見を開き事情を詳しく説明すると、関連する記事の多くでは自動車産業の多重な下請構造が大きな課題だといった内容の報道が目立った。

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 筆者は、TCDが事業を手掛ける自動車産業のアフターマーケット市場の変遷をリアルタイムで見てきている。その経験を踏まえると、一連の報道における自動車産業界の構造に関する指摘について違和感がある。

 本稿では、本事案について既報の報道とは少し角度を変えて考えてみたい。

 まず、今回の下請法違反の内容に触れておきたい。違反は大きく2つある。

 1つは、不当な返品だ。

 本来、取引先から部品を受け取る際、TCDが検品する、または取引先に文書で検品を委託した場合に限り、部品に不具合があることが分かった際に返品が可能だ。

 だが、TCDとしては取引先が最終的な検品を行うものであり、取引先との部品取引基本契約書があれば、TCDは返品が可能という解釈だった。

 違反行為の対象は65社で合計約5400万円。

 もう1つは、金型等の保管費用の未払いである。

 金型は、プレス加工などで部品を製作する際に利用するもので、部品が大きくなるほど金型も大型化し重くなる。

 その保管費用をTCDが支払うべきところを、取引先に無償で保管させていた。

 対象は49社で、金型などの総数は664個。

 ただし、今回の調査は、公正取引委員会の勧告による期間が2022年7月から2024年3月まで。TCDとしては今後、勧告対象期間以外についても総点検を行うとしている。