- ライドシェアの「全面解禁」に向けた新法の議論が迷走気味だが、そもそも地域交通の課題解決には実態を把握する正確なデータが必要だ。
- すでに国道や県道、高速道路など主要道路についてはデータ収集の仕組みがあるが、日本全国を毛細血管のように走る市町村道には、ほぼないのが実情だ。
- こうした空白を埋めるにはスマートフォンを介して移動データを収集する仕組みに期待がかかる。だが、個人情報保護の観点などから課題も多い。国がリードして利活用に向けた議論を活性化する必要がある。(JBpress)
(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)
ライドシェア新法や自動運転の促進など、少子高齢化で地域社会が直面する交通課題の解決に向けた議論が活発になっている。筆者は地域交通に関して、これまで国や地方自治体などで様々な議論に参加したり、取材者として地元の皆さんと意見交換したりしてきた。
そうした中でいつも気になっていたのが、そもそも移動に関するデータを、どのように収集・解析・活用すべきなのかという難題である。
移動データを収集するには、個人を対象にアンケート(パーソントリップ調査)を実施したり、JR・私鉄各社などの交通系ICカードやアプリなどを使って調査したり、また近年ではシェアサイクルに搭載したGPSによる位置情報を活用したりといった手法がある。
そのほか、クルマに搭載した通信機能内蔵のカーナビや車載カメラから、位置情報のほか、様々な車両の状況に関する走行データをクラウドに集約する方法もある。
ただし、こうした移動データと比べて、すでにもっと身近に、大量に、高精度の解析を可能にするデータが世の中に溢れている。しかも取得したデータは、B2B(事業者間のビジネス)やB2G(事業者と行政機関との間のビジネス)ですでにマネタイズされている。
それは、スマートフォン(スマホ)を介して把握できる移動データだ。