交通事故は継続的に減少傾向にあるが、2023年に気になる変化がみられた。警察庁のデータによると、交通事故は順調に減っているのだが、自動車乗車中の重傷者は過去10年で初めて増加に転じたのだ。
背景にはシートベルト非着用や携帯電話の使用といった問題のほか、高齢運転者の増加の問題もあるようだ。高齢者による事故においては、認知症やてんかんといった脳の病気との関連だけでなく、目の病気である緑内障との関連についても注目を集めている。
この4月、国土交通省が、バス、タクシー、トラックという職業運転手事業者を対象とした眼科検診の結果を公表した。職業運転手を対象とした大規模調査としては初めてとみられる。この調査結果を紐解きながら、緑内障のリスクについて書いていこうと思う。
圧倒的に高いタクシーの事故率
まず、事業者の眼科検診が注目される理由について。旅客の命にかかわるということは当然として、交通事故の頻度が事業者で多いことも背景にある。
最近、タクシーが絡む痛ましい事故があったことも記憶に新しいが、事業者の交通事故の頻度が高いという事実はよく取り沙汰されている。
内閣府の規制改革推進会議「第2回地域産業活性化ワーキング・グループ」の中で、LINEヤフー会長の川邊健太郎委員が23年11月に説明しているように、特にタクシーの事故率が高い。
同委員の説明をみていくと、バスの交通事故率は一般の普通乗用車や軽自動車よりも低いのに対して、タクシーやハイヤーの交通事故率は普通乗用車の1.5倍以上だということが分かっている(出典: 萩田賢司、横関俊也「各種の道路交通暴露度指標を活用した交通事故率の分析」)。
さらに、次ページに載せた国土交通省の事業用自動車の交通事故統計を見ても、バスやトラックと比べてタクシーは交通事故件数が圧倒的に多い。