1歳未満の小型犬は90%が歯周病と言われる(写真:moonmoon/イメージマート)1歳未満の小型犬は90%が歯周病と言われる(写真:moonmoon/イメージマート)
  • 京都府警は無資格で犬の歯石除去を行っていたドッグカフェ経営者を書類送検した。
  • その背景には、犬の歯周病対策として、無資格者による歯石除去サービスが横行しており、健康被害が増えていることがある。
  • 農水省も、獣医師資格を持たない者による歯石除去は「クロ」という見解を出しており、今後は獣医師法違反とみなされる可能性が高い

(星良孝:ステラ・メディックス代表、獣医師/ジャーナリスト)

 京都府警察は6月11日、同市南区で犬の歯石除去を行っていた51歳のドッグカフェ経営者を書類送検した。

 日本国内に「脱法歯石除去」が横行する中、警察が犬の歯石除去を違法と判断し摘発した初めてのケースである。

 後述するが、歯石は歯周病に関連し、犬にとって深刻な問題になっている。人間でも歯周病は問題になっているが、犬は1歳未満でほぼ100%が歯周病を発症し、チワワやトイプードル、ポメラニアンなど小型犬で問題になりやすい。

 獣医師資格を持つ筆者が、農林水産省や警察、関連学術団体などに取材し、無資格社による歯石除去が今回摘発に至った背景を探った。

 まず摘発の経緯だが、京都府警察によれば、書類送検された51歳女の経営者は犬を同伴できるカフェを運営し、それと一緒に7年~8年にわたり犬の歯石を取る商売も手掛けていた。ドッグカフェでの対応にとどまらず、歯石除去のサービスとして全国出張もしていた。

 こうした歯石除去が今回、京都府警により獣医師法違反と判断された。

 背景として、従来、歯石除去を行うには獣医師資格が必要との声が出ていた。無資格での歯石除去はかねて獣医療に踏み込んでいる可能性が指摘され続けていたのだ。これは明確に法律で禁止されているわけではないが、法律違反に近い行為で、いわば「脱法ビジネス」として業界では取り締まりが必要だとさえ言われていた。

 そうした事情もあり、今回の警察による全国初の摘発は注目されたのである。

 実際、被害も出ていた。筆者は、別の店舗ではあるが、無資格の店舗での施術により飼い犬が健康被害に遭ったという女性と連絡を取ることができた。

 この女性は今から3年ほど前、愛知県内にある無資格店舗で飼い犬の歯石を取る施術を受け、その3カ月後に首のしこりができた。そこで動物病院を訪れたところ、膿がたまっていると言われ、歯ぐきから膿を取り除く治療を受けた。

 女性は、「動物病院で以前に無資格の歯石除去などを受けたことがあるか質問されました。獣医師によれば、その処置のために細菌が歯ぐきから侵入し膿がたまった可能性があるということでした。歯石を取るのは1万円程度でしたが、膿を取る治療にかかったのは20万円ほど。うちの子は歯石除去をしてから怖がって口を開けなくなった」と後悔している。

 そうした中で、この6月に女性は京都府での書類送検の話を聞き、自分も被害者と思い至った。「歯石除去をした店舗に問い合わせたが、問題ないと取り合ってくれない。多額の治療費を払ったこともあり、私のところも問題なのではと警察に相談している」と話す(※次ページに、問い合わせた女性が店舗から受け取ったメールの文面を掲載しています)。