1歳未満の小型犬は90%が歯周病

愛知県の女性が無資格店舗から受け取ったメールの文面愛知県の女性が無資格店舗から受け取ったメールの文面。ちょっと何言っているか分からない

 女性が歯石を取った話している店舗のホームページを確認したところ、「無麻酔デンタルケア」とうたっており、費用は小型犬では初回1万3000円(税抜)、大型犬では2万6000円(同)。もちろん、無資格ではある。

 女性が店舗から受け取ったメールによると、「違法行為と認識しているが、国から許可番号を得て、使っている器具も自社開発で問題ないとしている」と記載されている。許可番号はペットショップなどが得るものと見られるが、診療行為を許可するものではない。

 女性は、この店舗が公開しているスケーラーを使った歯石除去の動画や画像で公開しているものと確認している。スケーラーであれば自社開発であるかどうかは無関係だ。

 京都府警の例で言うと違法と判断される可能性が高い。

 そもそも犬にとって歯周病が身近な病気だ。犬など小動物の歯科を手掛ける獣医師で作る日本小動物歯科研究会によると、2~3歳の犬の70~85%が歯周病であり、1歳未満の5kg未満の犬では90%が既に歯周病にかかっているとされる。

 歯周病は、歯の表面に付いたねばねばしたカスである歯垢に細菌が増殖して、歯の周りの組織を侵す。歯垢はミネラルなどと結びつくと、固い歯石になる。

 歯周病は口臭やあごの骨をもろくするなどの原因になるほか、全身に影響し、心臓や肝臓などの内臓にも悪影響を及ぼすことが明らかになってきている。放置することで、健康をむしばむ結果につながる病気といえる。

 そのため、歯を衛生的に保つことが重要視されるようになっている。そうした中で、無資格での犬の歯磨きや歯石除去が広がり、先に紹介したようなトラブルが多発している。

 日本小動物歯科研究会の会長を務めるフジタ動物病院(埼玉県上尾市)院長の藤田桂一氏は次のように説明する。

「麻酔せずに行う歯石除去が問題。無麻酔だと歯周病の程度を確認できず、抜歯が必要かどうかの判断も難しい。さらに、歯周ポケット内の歯石除去が適切に行えない。そうなるとそもそも歯石除去の意味がない。治療中の痛みも増大し、驚いて台から落下して骨折したり、心臓病を抱える場合はショック死したりするケースもある」

 同研究会のアンケートによると、無麻酔での歯石除去のトラブルが報告されており、それらには「下あごの骨が折れる」「歯が折れる」「口と鼻の穴がつながる」「落下による骨折」「処置中や処置後の死亡」「肺炎」「性格の変化」などが含まれていた。

 歯石除去に関しては、無資格、無麻酔という2つの大きな課題が存在している。これらは命に関わる問題でもある。