兵庫県知事によるパワハラはその実態が明らかになるにつれ、目と耳を覆いたくなる(Gerd AltmannによるPixabayからの画像)

 7月15日、「斎藤元彦兵庫県知事の違法行為等について」(令和6年3月12日現在)と題された文書を公開し、県から一方的に「嘘八百」「事実無根」「誹謗中傷」に当たるとされ、定年直前に解職ののち、停職3か月の懲戒処分とされた、故・渡瀬康英・兵庫県西播磨県民局長が「死をもって抗議する」と、召喚されていた「百条委員会」に提出する証拠、証言の音声データなどをすべて整えた末、自ら生命を絶っていたとの報道がありました。

 筆者は渡瀬氏と同世代であり、また長年にわたって「無謬原則」建て前の組織で不当な現実を目にしてきた一個人としても、本件は他人事とは思われません。

 本来なら「59年目のパリ祭:加藤登紀子の安田講堂」という別稿を準備していましたが、急遽予定を変えて、本件に関して報道から漏れていること、また報道が全く理解しない本質的なポイントを補いたいと思います。

冤罪追い込みそのものが「知事パワハラ」

 今年4月2日、鹿児島県警の不正告発も行われたネットメディアHunter上に、渡瀬康英兵庫県西明石県民局長(告発当時)が発信した抗議文書の実物が、個人情報を黒塗りした形で公開されました

 これに先立って3月27日、3月末で定年退職予定だった渡瀬氏の告発を、調査もなしに「嘘八百」と断じて解任、5月には「停職3か月」とする旨の記者会見を、斎藤元彦・兵庫県知事は行いました。

 この事実自体が「パワハラ」であり「嫌がらせの見せしめ」であり、さらに言えば公務員職権の濫用そのものであることを見落としてはいけません。

 7月19日に予定されている百条委員会では、仮に斎藤知事がこれに先立って(労組に加え自民党まで辞任要求を突き付けているので)辞職したとしても「元知事の犯罪容疑」で徹底した調査を継続する必要があります。

 渡瀬氏の生命が失われているのですから・・・。

「渡瀬氏死亡で百条委員会を開く意味がなくなった」などという意見も出ているようですがとんでもないことです。

 渡瀬氏は文字通り、命がけの「ダイイング・メッセージ」を残しており、これらがすべて白日のもと百条委員会で披露される必要があるのは、仮に斎藤氏が「元・知事」になっても、一切変わりません。

 なぜなら、「降格」された渡瀬「元」局長は4月に入って県の公益通報窓口に、同一の内容を送付しましたが、斎藤知事以下の兵庫県は「公益通報者保護法」を正面から破っているのです。

 5月7日、客観的な第三者による調査委員会ではなく、知事・副知事主導の内部調査で「知事のパワハラ行為などの告発内容を『核心的な部分が事実でない』と否定する調査結果を公表。

「被告発者主導の調査」の「結果」、「告発文」は 誹謗中傷に当たるとして渡瀬氏に停職3か月の懲戒処分が下されます。

 これはあまりに一方的だということで、第三者委員会よりも強い調査権限を持つ「百条委員会」の設置が自民党からも提案がありました。

 そして、百条委員会が設置されたこの期に及んで片山副知事は、自身の辞職を条件に「百条委員会」回避を自民党県議団に依頼して蹴られた経緯なども明らかになり、救いようのない腐敗状況となっていました。

 いま白日のもとでプロセスがすべて報道されている「渡瀬局長の定年前降格」「第三者委員会の不設置」「被告発者の知事・副知事主導による県の調査」「それに基づく事実無根、誹謗中傷」「停職3か月の処分」、そしてそれらを知事自らが「定例記者会見」で発言、発表し、公益通報者である渡瀬康英氏を追い込み、最終的に「覚悟の自刃」にまで追い込んでいった経緯。

 これらすべてが、知事主導の「パワーハラスメント」ないし「公務員の権限濫用」「公益通報者保護法違反」そのものです。

 辞職した「片山副知事」を含め、仮に斎藤氏が知事の職を辞しても、百条委員会の調査は貫徹、処断すべきする必要があります。

 また、その過程で刑事司法の対象となる行為が明らかになれば、厳正な措置が講じられるべきでしょう。

 というのも、決して罰せられることのない道徳的な罪科も、周辺無数に累々と横たわっているのですから。