マイナンバーカードと健康保険証が一体化した「マイナ保険証」。移行作業が進められており、12月2日には現行の保険証の新規発行が終わる。紙の保険証が使えなくなるなどの誤解も広がっており、マイナ保険証への移行については不満と混乱も広がっている。なぜこのような混乱が起きているのか。「番号制度」の専門家がマイナンバー制度の本質とマイナ保険証の必要性について改めて語る。(前編)
※医学通信社『月刊/保険診療』10月号より転載
(榎並 利博:行政システム株式会社 行政システム総研 顧問、蓼科情報株式会社 管理部 主任研究員)
2024年12月2日に紙の健康保険証が廃止され、マイナンバーカードへと一本化される。6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024」、いわゆる骨太の方針においても、「現行の健康保険証について2024年12月2日からの発行を終了し、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行する」と明記されており、政府の強い意思が感じられる。
その一方で、保険証の紐付け誤りのトラブルやカード読み取り機器の不具合、システムの切り替えコストや情報弱者対策の不備などを根拠に、一部のマスコミや団体などは拙速な導入だと根強く反対意見を表明している。
このような騒動に直面し、国民や医療業界では漠然と不安を感じている方々が多いのではないだろうか。
筆者はおよそ30年前の住基ネット以来、番号制度に関する研究を続け、マイナンバーの制度設計に関して著書や講演などを通じて提言してきた。
今回は、マイナンバー制度の本質やその公益性を確認するとともに、より大局的な観点からマイナンバーとマイナ保険証の意義を考えてみる。さらに、マイナ保険証に潜む根本的な問題とその対応方法を提示するとともに、効率性・利便性・安全性を兼ね備えた医療DXについて展望していきたい。