自治体DXの移行期限まであと2年余りだが、様々な問題が噴出している(写真:アフロ)
  • 「自治体DX推進」の旗印の下、全国の自治体では基幹業務システムを標準化する情報システムの標準化作業が進んでいる。
  • だが、自治体業務では、経験的に人口規模によって業務プロセスが異なる業務と異ならない業務があり、標準システムの採用によって業務効率が改善するとは限らない。
  • これまで新システムへの移行では、業務効率の改善、つまり人件費の減少が当たり前だったが、これからは人件費増も念頭に置く必要がある。

(榎並 利博:行政システム株式会社 行政システム総研 顧問、蓼科情報株式会社 管理部 主任研究員)

「自治体DX推進」の旗印の下、全国の自治体では基幹業務システムを標準化する情報システムの標準化作業が進んでいる。国民に直接的な関係がないためあまり報道されていないが、この作業はデジタル庁創設を含むデジタル改革の一環として法律で義務付けられている。

 移行期限は2025年度末まで、あと2年余りに迫ってきた。昨年9月の基本方針改定では「移行難易度が高いシステムの期限の猶予」が追記されたものの、基本的な枠組みは変わっていない。

 基幹系業務の標準システムへの移行だけでなくガバメントクラウドへの移行も求められるが、ここにきて、ガバメントクラウドの運用経費や回線費用が増大する、補助金の不足分を国が負担してくれるのか──などの報道も目立ってきた。

 それだけではない。当初から予想されたことだが、スケジュールに無理がある、移行事業者が見つからない、知識を持った現場の人材が不足しているといった声もあがっている。

 補助金の話はひとまず置くとして、筆者が自治体のデータを分析したところ、標準システムを採用した場合に人件費がかさむ、つまり従来の職員数では対応できず、職員増が必要になる業務が出てくるかもしれない。

【参考資料】
業務運用の相違を乗り越え、移行を成功させるために-地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化(行政システム総研)

 自治体業務においては、経験的に人口規模によって業務プロセスが異なる業務と異ならない業務、つまり標準化しにくい業務としやすい業務がある。しかし、現在の自治体標準化では、基幹系業務はすべて標準化が可能だという前提で(異なる部分はオプション機能で対応する)進んでいる。

 そして、標準システムに業務運用を合わせればうまくいく、人件費(運用に携わる職員数)は変わらないという前提だ。

 そこで筆者は、人口規模によって業務プロセスが異なる業務形態と、人口規模によって業務プロセスが異ならない業務形態の2類型があるとの仮説を立てて検証してみた。

 前者の例は税業務で、データを一括で処理するバッチ型業務のため規模の経済性が生じる、つまり専門的な分業体制が構築しやすくなるため業務効率が上がると考えられる。

 もう一方の後者の例は窓口業務で、一件ごとに処理をするトランザクション型業務のため規模の経済性は生じず、業務効率は変わらないと考えられる。

 その検証結果は、次ページにある通りだ。