なぜ政府は自治体システムの標準化を急ぐのか、その答えはChatGPTでも教えてくれない(写真:ロイター/アフロ)

(榎並 利博:行政システム株式会社 行政システム総研 顧問、蓼科情報株式会社 管理部 主任研究員)

誰も知らない自治体の情報システム標準化作業

 マイナンバーカード普及のためマイナポイント2万円分を付与する大盤振る舞い、そして健康保険証としての利用登録を推進、かと思えば2024年秋に紙の保険証を廃止するとの発表で世間はざわついた。2023年3月末に全国民がマイナンバーカードを保有することが目標だとはいえ、その手法の強引さはこれまでの政府の姿勢と比べると違和感がある。

 マイナンバーカード交付やマイナポイントの利用登録など、期限が迫るにつれ自治体の現場ではかなりの混乱をきたしたことだろう。しかし今、自治体ではカードの普及以上に大変な作業を抱えている。国民に直接関わるものではないためあまり報道されないが、それは全国自治体の基幹業務システムを標準化するという自治体情報システムの標準化作業だ。

 その主な目的を政府の基本方針から抽出すると、コストの削減(18年度比で3割削減)、ベンダーロックインの排除、国民への迅速なサービス提供の3つである。

 そして標準化作業の概要は、25年度を目標として17の基幹業務(※1)を標準システムに置き換え、さらにガバメントクラウドへの移行を要請するというものだ。しかも、これらの標準化はデジタル庁創設を含むデジタル改革関連6法の一つ(※2)として法律で義務付けられた。

※1:現在では戸籍、戸籍附票、印鑑登録が追加され20業務となっている
※2:地方公共団体情報システムの標準化に関する法律

 コロナ対策の特別定額給付金オンライン申請では様々なトラブルが報道され、自治体ごとに実施方法がばらばらだったことも問題視された。これで政府がデジタル化の遅れに大きな危機感を持ったことは確かだが、多くの関係者は政府の態度に若干違和感を持った。

 標準化という方向性は正しいが、なぜ無謀な計画と思えるほど急ぐのか。全国の自治体は1700以上あり、システム移行の難しさを知っていれば、すべてを5年間で移行する計画はあまりに無謀だ。