- マイナンバーの紐付けミス問題は収束するどころか、保険証廃止問題から政権批判にまで広がっている。
- 今回の狂想曲を見て感じるのは、マイナンバーカードがリアルでもデジタルでも本人確認ができる高機能カードであるがゆえに、一般国民が理解できず、いらぬ誤解や問題を引き起こしているということだ。
- 今後は身元確認と当人認証を区別したシンプルな設計にした上で、国民一人ひとりの番号を秘密とせず、「この個人情報は私のマイナンバーがついているから私のものだ」と堂々と言える仕組みにすべきだ。
(榎並 利博:行政システム株式会社 行政システム総研 顧問、蓼科情報株式会社 管理部 主任研究員)
マイナンバーの紐付けミス問題については早急に対応すべきだが、カードの返納枚数をいちいち報じるメディアの過熱ぶりは見ていて呆れるばかりだ。
この1年間でマイナンバーカードの交付枚数は約3500万枚も急増した。そのほとんどはポイント目当ての駆け込み組だ。ポイントさえもらえればカードは用済みという人がいても不思議ではない。報道する価値があるのだろうか。
マイナンバーカードと紐付けの問題について拙稿「マイナンバー紐付けミス狂騒曲、これは初期トラブルか基本方針の歪みか」を投稿したのは6月の初めだ。どのような制度でも初期トラブルは発生するもので、そのうち収まるだろうと楽観していた。
しかし、いまだに収まらないどころか、専門家とは思えないような人物までがメディアに参戦している。「マイナンバーは信頼できない」など、保険証廃止問題から政権批判にまで騒ぎは広がっている。こうなると、紐付けミス狂騒曲どころかまるで場外乱闘の様相だ。
◎マイナンバー紐付けミス狂騒曲、これは初期トラブルか基本方針の歪みか
筆者としては、このような場外乱闘に加わる気はない。しばらく静観するつもりだが、新聞・雑誌やテレビの取材には応じている。マイナンバーに関して何が問題なのか、何が正しいのかを知りたいという記者に対しては、本当のことを伝えて報じてもらう必要があるからだ。
その対応のなかで、「我が国はどこで何を間違えたのか」を考えるヒントに気づいた。自省も含めて、「我が国は最先端システムにこだわり過ぎたため、誤解や混乱を招いたのではないか」と。