ライドシェア一般ドライバーの車両に取り付けられた「ライドシェア」の表示(東京都江戸川区/写真:共同通信社)

 今年4月に一部解禁された白ナンバー車による旅客輸送「日本版ライドシェア」。現時点では事業ホストはタクシー会社のみ、運用できる時間帯も限られるなど自由度が低く、タクシー不足の補完策という程度の意味合いしか持たないが、旅客輸送は第二種免許必須という“岩盤規制”に風穴をあけた意義は小さくない。政府は全面解禁の方向性に関する結論を先送りしたが、果たして日本にライドシェアは根付くのか──。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏がレポートする。(JBpress編集部)

一部解禁後もなぜライドシェアの動きは低調なのか

 2024年4月8日に始まった日本版ライドシェア。第二種普通免許を持つプロドライバーが営業用車両で旅客を運ぶタクシーと異なり、第一種普通免許ドライバーが白ナンバーのクルマで旅客を運び、対価を得る。従来は「白タク行為」として禁じられていたが、部分的とはいえそれが認められたのだ。

 この歴史的解禁から2カ月が経った今日、ライドシェアはほとんど話題になっていない。国土交通省によれば、解禁から5月5日までの28日間で稼働したライドシェア車は延べ2283台。1日当たりに直すと81.5台に過ぎない。こんなに少なければ、ライドシェア車の利用体験がごく限られたものになるのは自明の理だ。

 稼働が少ない最大の理由は、日本版ライドシェアが実質タクシー業界の管理下に置かれていることだろう。国土交通省自体、ライドシェアがタクシー不足を補完するものと位置付けており、制度設計はライドシェアの本来の定義からはほど遠いものだ。

 参入事業者として認められるのはタクシー会社に限られており、ライドシェアのドライバーになりたい人はタクシー会社と雇用契約を結んで講習や管理を受ける。

 一方、ライドシェア車を利用できるのはアプリ配車のみで、タクシーのように道端で手を上げて利用する“流し営業”は認められない。事前に出発地と到着地が固定され、料金は事前確定。その料金水準はタクシーと同一だ。

 運行地域や時間帯も厳しい制約を受ける。解禁エリアは東京23区+武蔵野市+三鷹市、神奈川、名古屋市、京都市など大都市が中心。運行時間も深夜早朝が主だ。東京や京都では辛うじて毎日運行が可能だが、多くは週末のみに限られる。

 供給不足で利益を上げる機会は逸したくないが、既存会社の既得権益はビタ一文渡したくはないというタクシー業界の意向は心情的には理解できるが、ライドシェアを完全に下に見ているという点ではいささか傲慢に過ぎる。

日本版ライドシェアの導入を認める4区域の概要(図表/共同通信社)
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