ライドシェアで本当にタクシー不足を解消できるのか?(写真:アフロ)
  • 4月から一般ドライバーが自家用車で客を有償で運ぶ「ライドシェア」が一部解禁された。東京などの一部地域でタクシー会社が運行管理をする、いわゆる「日本版ライドシェア」だ。8日から順次サービスが始まり、「Uber」「GO」などのタクシー配車アプリでライドシェアの自家用車も呼べるようになる。
  • すでに地方自治体のなかには福祉などの一環として、「自家用有償旅客運送」という既存の枠組みを活用したライドシェアを実施してきた地域もある。今後は大都市圏でもタクシー会社が運行管理する形で事業が可能になった。タクシー会社以外の新規参入についても議論が進む。
  • だが、世界のモビリティサービスに詳しい牧村和彦氏は、そもそも日本版ライドシェアの普及に懐疑的だ。その理由を聞いた。

(湯浅 大輝:フリージャーナリスト) 

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ライドシェアの需要は本当にあるのか?

──日本でライドシェア導入に向けた議論が活発になっています。4月から大都市圏でもタクシー会社が運行管理をする形で一部解禁になりました。3月には北陸新幹線の延伸開業に合わせて石川県加賀市でもサービスが始まりました。「加賀市版ライドシェア」では、加賀市観光交流機構が事業実施主体となり、Uber Japanが配車アプリを提供、加賀第一交通が運行管理を担います。

 そうしたなか、牧村さんは一貫して日本版ライドシェア普及に懐疑的です。なぜでしょうか。

牧村和彦氏(以下敬称略):3月に始まった「加賀市版ライドシェア」を事例に考えてみましょう。私は、加賀市版ライドシェアの先行きには不安を感じていますが、その理由を一言で言えば、加賀市にはライドシェアの需要があまりないと見ているからです。

 加賀市などは北陸新幹線の延伸で観光客が増加し、ライドシェアの需要が高まると予測しているようですが、はたしてそうでしょうか。

牧村 和彦(まきむら かずひこ)モビリティデザイナー 東京大学博士(工学)筑波大学客員教授
都市・交通のシンクタンクに従事し、将来のモビリティビジョンを描くスペシャリストとして活動。 内閣府、内閣官房、国交省、経産省、環境省、大商等の委員を数多く歴任。代表的な著書に、「MaaSが都市を変える(学芸出版社)、不動産協会賞2021」、「MaaS~モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ(日経BP、共著)」、「Beyond MaaS(日経BP、共著)、交通図書賞他」等多数

 北陸新幹線の加賀温泉駅では、発着は上り、下りともに昼間で1時間に2〜3本。主な観光地としては著名な温泉街があります。その温泉街には、駅から旅館が運営する送迎バスと民間が運営する路線バスで行くことができます。足のない地域ではありません。

 そこに一般人が自家用車で送迎するアプリ専用のライドシェアのサービスを行政主導で導入することに疑問を感じます。