ライドシェア導入に向けた議論が混乱している(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)
  • ライドシェアの「4月一部解禁」を目前に控え、議論が混乱している。
  • 導入ありきの拙速な議論に、地域住民はおいてけぼりだ。
  • 背景にある3つの理由を整理する。

(桃田健史:自動車ジャーナリスト)

 ライドシェアが4月から一部解禁することを受けて、各方面での議論が混乱している。その理由は大きく3つありそうだ。

 ちなみに、ここで言う「ライドシェア」とは、普通免許のみを持つドライバーが乗用車をタクシーのように使って有償で旅客運送を行うことを指す。

 混乱の1つ目の理由は、総論と各論、または一般論と技術論などがごちゃ混ぜになっていることだ。

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 そうなってしまったのは、ライドシェア日本導入に関する議論があまりにも拙速だからだ。

 まず、これまでの流れを簡単に振り返ってみよう。

 2023年中頃から自民党の有力政治家や地方自治体の首長が、日本への導入に向けた積極的な議論が必要と発言するようになった。これを受けるかのように、岸田首相が同年10月、臨時国会の所信表明演説でライドシェア日本導入に向けた議論を加速させる方針を示した。

 これを、事実上の「ライドシェア日本導入のGOサイン」と捉えたマスコミ各社が様々な観点でライドシェアに関わる報道を繰り広げるようになる。

 この時点では、タクシー事業者や地方自治体の多くは、遠巻きに事態の進展を見守るといった雰囲気だった。

 それが、内閣府の規制改革推進会議の地域産業活性化ワーキング・グループでの議論がYouTubeで生配信されると、「ライドシェアありき」ともとれるような拙速な議論が表面化。タクシー事業者、地方自治体、そして新規参入を狙うライドシェアのサービス関連企業など、それぞれの立場での対応策の必要性を強く感じるようになった。

 年末には、早くも規制改革推進会議が、規制改革推進に関する答申を公開。年が明けた1月、全国各地のタクシー協会などが4月の一部解禁を想定し、独自のライドシェア案を公表した。今後の国の決定を受けて修正する「見切り発車」という印象だ。