4月8日、日本版ライドシェアの解禁が始まった。一部の地域や時間帯における限定的な解禁で、参加する一般ドライバーの数は60人からのスタートだ。安全管理を担うのはタクシー会社で、当面はタクシー会社が一般ドライバーを雇用する。政府は新規参入を含む全面解禁に向けた議論を続け、6月に結論を出すとしている。
日本版ライドシェアにはどのような可能性と課題があるのか──。交通経済学の観点から交通政策を研究している専修大学商学部教授の太田和博氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──日本版ライドシェアの一部解禁が始まりました。タクシーとライドシェアは何が違うのでしょうか?
太田和博氏(以下、太田):公共交通の本来の定義は「公衆に開かれている」ということです。公衆電話の「公衆」と同じように、誰でも使うことができる。だから、ドライバーは客を選ぶことはできません。
たとえば、走行距離がわずかだからといって、運転手が客の乗車を拒否したりすると、運転手やタクシー会社がペナルティを受けることがあります。タクシーは公共交通なので乗車拒否はできないということです。
ところが、アメリカで始まったウーバーやリフトの場合、時間帯やエリアにおける金額の変動を見て、ドライバーは仕事に入るかどうかを決めている側面があります。つまり、値段が高いタイミングや場所にサービスが集中するのです。
ライドシェア推進派は「価格のメカニズム」として、こうした現象を肯定してきました。需要と供給のバランスで適正な価格が決まっているという考え方です。
一方で、天候や混み具合、時間帯などのコンディションによって、金融市場のように価格が変動するようでは困るという考え方もあります。
こうした部分が、ライドシェアをよしとするか否か、ライドシェアの設計をどうするかといった部分を議論する際のポイントです。
──中央官庁が日本版ライドシェアを仕切っていますが、この点に関してどういった印象をお持ちですか?