- 日産自動車やダイハツ工業などで発覚した、いわゆる「下請けいじめ」について、公正取引委員会からの要請を受けて日本自動車工業会が取引の適正化に乗り出す。
- 実態調査などを通じて対策を講じていく方針だが、業界団体による自浄作用がどこまで働くかは不透明さがある。
- 業界として喫緊で取り組むべき「7つの課題」を示しているが、それだけでは不十分だ。(JBpress)
(桃田健史:自動車ジャーナリスト)
自動車メーカーなどでつくる業界団体の日本自動車工業会(以下、自工会)は3月22日、定例会見を開いた。今年1月に就任した片山正則会長(いすゞ自動車会長)の下、新体制として初の会見だった。
注目されたのが、日産自動車などで発覚した一連の下請企業に対する問題についての発言だ。片山会長は、自工会として早急に調査を行うことを明らかにした。
公正取引委員会は3月7日、日産が下請法第4条第1項第3号(下請代金の減額の禁止)の規定に違反したとして勧告を行った。公取委によると、日産は自動車部品を製造する下請け企業36社に支払う代金を不当に減らしていたとされる。減額した金額は全体で30億円を上回り、認定額としては過去最高だ。
また公取委は15日、コストが上昇した分の価格転嫁を求める下請け企業などからの要請に応じなかった事業者10社の社名を公表。独占禁止法の「優越的地位の濫用」に当たるとした。その中に、ダイハツ工業、三菱ふそうトラック・バスの名前があった。
公取委は14日に、自工会に対して「下請代金支払遅延等防止法(下請法)違反行為の防止について」という要請を出していた。
こうした、いわゆる「下請いじめ」とも捉えることができるような取引の中には、自動車業界における長年の商慣習とも言えるものも少なくない。こうした業界の実態を自工会がどのように調査をし、メスを入れていくのか、経済界全体から注目が集まっている。
特に、適切な取引価格を実現することは中小の自動車部品関連企業にとっては切実な問題であり、商慣習の抜本的な改革は急務である。
自工会の片山会長は、公取委に調査結果を報告するとともに、調査内容を公開する可能性を示唆した。だが、調査報告を取りまとめる時期については明言しなかった。