3月1日付でダイハツの社長となるトヨタ出身の井上雅宏氏(写真:REX/アフロ)
  • ダイハツ工業が新たな経営体制の下で再出発する。2月13日の記者会見では、「風土改革」「経営改革」「モノ造り/コトづくり改革」の3つの方向性が示された。
  • だが、信頼は地に落ち「顧客離れ」は避けられそうにない。ディーラー経由の販売というユーザーとの距離の遠さも、信頼回復の壁となりかねない。
  • ディーラーを巻き込んだ製販一体となってユーザーの声にもっと耳を傾け、関係を再構築していく必要がある。(JBpress)

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 ダイハツ工業(以下、ダイハツ)とトヨタ自動車(以下、トヨタ)は2月13日、都内で記者会見を開きダイハツの新体制について説明した。これに先立ち、ダイハツは2月9日、一連の不正問題に対する第三者委員会の報告を受けて作成した再発防止策を国土交通省に報告している。

 今回の会見は、ダイハツという企業の再出発に対するダイハツとトヨタの決意表明であった。

 会見には筆者も参加し、トヨタの佐藤恒治社長と3月1日付けで就任するダイハツの井上雅宏新社長の生の声を聞きながら、ダイハツの行く末について思案した。

 その中で、最も気がかりなのは、これから実施されるダイハツ大変革を、ダイハツ本社がユーザーに対してどうやって説明し続けていくのかという点だ。

 言わずもがな、一連の不正問題によってダイハツのブランドイメージは地に落ちた。不正は長期間かつ多様な分野に及ぶ前代未聞の内容で、なかでも大きな問題はクルマ造りの根幹をなすクルマの安全性を軽視した不正にある。

 そのため、ユーザーとしては、いま使用しているクルマに対して「このまま乗っていても大丈夫なのか?」という疑問を持つのは当然だ。

 ダイハツはホームページで「不正が判明した車種に対しては、当社として、安全性能・環境性能が法規基準を満たしているか、一つひとつ技術検証・実車試験等を実施してまいりました。その結果、法規で求められる性能基準を満たしていることを確認いたしましたので、該当する車両をお乗りのお客さまにおいては、すぐにご使用を中止いただく必要はございません」とのコメントを発表している。

 だが、ユーザーからすれば、不正をした会社が自主的に行った技術検証や実車試験等の結果を鵜呑みにしてよいのか、という疑問を持つこともあるだろう。そうした疑問については、国土交通省の関係者が立ち会いのもとで行われる、不正があった各試験に対する「確認試験」を経て車両生産が再開された段階で、実質的には解消されるはずだ。