「007/ゴールドフィンガー」時代から変わらない伝統

 アストンマーティンの歴史は今年で111年目、またDBシリーズとしては76年目を迎える。

 最初にアストンマーティンの存在を意識したのは、60年代の英国映画007シリーズ第3作「ゴールドフィンガー」に登場したボンドカーのDB5である。そうしたヘリテージを基に、DB12にもゴールドフィンガー エディションが用意されている。

 70年代以降は、何度かアストンマーティンの経営母体が変わることで、モデルラインアップ全体が安定しない時期が続いた。

「スーパーツアラー」を感じる、DB12の車内空間(写真:同乗者が撮影)

 なかでも、90年代に米国フォードのPAG(プレミアム・オートモーティブ・グループ)傘下となった時期、ジャガーなどPAGに属するメーカー関係者らと、アストンマーティンの将来像について度々、意見交換した。

 そして今、アストンマーティンは、F1やGTなどモータースポーツの世界で再び存在感を高めている。それと同時に、「ヴァンキッシュ」「ヴァンテージ」、SUVの「DBX707」、そして今回試乗したDB12など、モデルラインアップが充実してきた。

 アストンマーティンは今、ヘリテージと技術に裏打ちされ、本来のアストンマーティンらしさを安定して訴求できるステージに入っていると感じる。

 最後に、アストンマーティンのCTO(チーフテクニカルオフィサー)、ロベルト・フェデリ氏の言葉を紹介する。

「DB12は、アストンマーティンそのものの姿を体現するクルマです。パフォーマンス、ダイナミクス、エンジニアリング、テクノロジーのリーダーとしてのアストンマーティンのポジションを主張する1台なのです」

 今回、DB12との体感は、アストンマーティンの次世代に向けた可能性を強く感じさせた。

桃田 健史(ももた・けんじ)
日米を拠点に世界各国で自動車産業の動向を取材するジャーナリスト。インディ500、NASCARなどのレースにレーサーとしても参戦。ビジネス誌や自動車雑誌での執筆のほか、テレビでレース中継番組の解説なども務める。著書に『エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?』『グーグル、アップルが自動車産業を乗っとる日』など。
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