2.細く異常に長い北朝鮮製自走榴弾砲
火砲には、NATO(北大西洋条約機構)タイプとロシアタイプがある。
NATOタイプは、総合的な性能を発揮させるためにバランスよく製造されている。
ロシアのタイプは、射程を長くして遠くの目標を射撃できるように、砲身を長くしている。
そのため、ロシアの火砲は、加農砲(ガン)と榴弾砲(ハウザー)を一緒にして、「ガンハウザー」とも呼称されている。
冷戦時代、米欧とロシアの砲兵同志が撃ち合えば、米欧の火砲の射程外から射撃ができるように考案された。
砲と砲が戦う「対砲兵戦」で勝利するためだ。
世界で、砲身が長い火砲として知られているのは、ロシアの「2S7ピオン 203ミリ自走カノン砲」と北朝鮮の「170ミリ火砲M1989コクサン」だけである。
ロシアの2S7ピオンは、現在では使用されていない。砲身が長すぎて、多くの故障が生じたからだろう。
北朝鮮製170ミリ自走榴弾砲M1989コクサンの射撃状況
北朝鮮の口径170ミリのコクサンの最大射程は、通常砲弾では40キロ、噴進弾(RAP弾)では54キロである。
ロシアの口径203ミリのピオンの最大射程は、通常砲弾では37.5キロ、噴進弾では55キロである。
米国の203ミリ榴弾砲の最大射程は、通常砲弾では25キロ、噴進弾では30キロである。
自衛隊の203ミリ榴弾砲も米国製のものとほぼ同じである。
ロシアや北朝鮮のこれらの火砲の射程は、日米の火砲よりも砲身も射程も約1.5倍長い。この2つの火砲を除けば、射程はほぼ同じである。