約10年間に及んだ米第7艦隊での前方任務を終え横須賀港を離れるミサイル駆逐艦「ベンフォード」(9月25日、米海軍のサイトより)
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 高市早苗首相が、国会答弁で台湾有事が日本の「存立危機事態」になり得ると述べ、これに対して、中国の大阪総領事が「その汚い首を斬ってやる」などとX(旧ツイッター)に書き込んだ。

 総領事は書き込みを削除したものの、中国政府は総領事の発言を撤回していない。

 日本の政治家をはじめ国民やメディアは、意見を述べる前に首相の発言の中にある、台湾有事が生起した場合、日本や台湾周辺でどのようなことが起こるのか、知っておく必要がある。

 中国軍の動きは、日本の領域で日本を巻き込むのか、そのとき日本はどうあるべきかなどのシナリオを事前に考えておく必要があるのだ。

 また、これらの発言や中国政府の対応を、これまでの中国軍による日本周辺での情報収集、軍事的恫喝、軍事力増強と重ね合わせてみて、それらの延長線上に何があるのかを認識し、中国の隠れた本性を明らかにすることが必要である。

1.中国軍の飛躍的増強と日台軍との比較

 中国は軍事力を飛躍的に増強して近代化させ、日本や台湾周辺での行動を活発化させている。

 中国の近代化と増強について、近代的な主要兵器の数を1995年と2025年を比較してみよう。

 防衛白書やミリタリーバランスなどによると、海軍の近代的な主要艦艇(駆逐艦・フリゲート艦)は、6隻だったものが94隻の約16倍に、近代的な潜水艦は1隻から55隻の55倍に、空軍の第4・5世代以降の戦闘機・攻撃機数は26機から1668機の64倍に増加した。

 一方、地上軍の兵員数は220万人から96万人に減少させた。減少した分は、武装警察などに配置転換されただけであり、実態的にはほとんど変わっていない。

 1995年頃、中国は軍事力の増強を始めた。私の見解では、当時もし台湾に侵攻すれば、台湾に撃退されるほどの規模だった。

 近代的な主要兵器について、中国軍と台湾軍・日本の自衛隊を比較する。中国軍の戦力は、表のとおりであり台湾や日本との差は大きい。

 その差は、今後ますます開く可能性が高い。

 米国との同盟が機能しなければの話だが、中国は台湾への侵攻に成功し、日本との局地的な衝突にも勝利できると、自信を持つだろう。

 中国が勝てる自信を持てば持つほど、台湾や日本に対して強圧的に振る舞い、軍事的な威嚇を増長してくるだろう。

表 中国軍と台湾軍・日本の自衛隊の近代的な主要兵器の比較

    中国 台湾 日本
陸上戦力 陸上兵力(万人) 96 9(11倍) 15(6倍)
戦車(両) 6000 750(8倍) 360(17倍)
海上戦力 空母・駆逐艦・フリゲート艦 100 30(3倍) 51(2倍)
潜水艦 70 4(18倍) 22(3倍)
航空戦力 第4・5世代戦闘機 1670 320(5倍) 330(5倍)

注:()内は、中国軍からみた比較数

 細部を見てみると、特に陸上戦力と潜水艦の差は10倍以上、航空戦力の差は5倍、水上艦艇の差は3倍だ。

 さらに、核兵器を2024年には600発以上、大量の弾道ミサイルも保有している。
 
 2025年現段階では、中国が台湾に侵攻し、米国の十分な協力がなければ、台湾本土を占拠する可能性が出てきた。とはいえ、占拠が成功したとしても、大きな損失を被ると見ている。