2.海上からの強襲揚陸能力の著しい増強
中国が日本や台湾へ侵攻しようとすれば、海洋を渡洋しなければならない。そのために、中国は強襲揚陸艦(乗船したまま砲弾を発射しながら海岸に上陸できる艦)を大量に建造している。
1995年頃と比較すると、4万トンや2万5000トンのドック型揚陸艦を0から11隻(新たな揚陸艦「四川」は試験航行中)、4200~4800トンの戦車揚陸艦を16隻から25隻、170~560トンのエアクッション揚陸艇を0から46隻に増加させた。800~1500トンの中型揚陸艦は35隻から14隻に減少した。
旧型で中型の揚陸艦を減少させ、新型で大型の揚陸艦を建造したことで、輸送力を大幅に増加させた。
海上輸送できる兵員は、私の試算では1995年に約6000人(1.5個旅団規模)であったものが、2025年では約3万人(3個師団規模)に増加したことになる。
中国海軍揚陸艦の増強は、台湾や日本の南西諸島への奇襲侵攻の可能性を高めている。
図 揚陸艦から水陸両用車を使った上陸(イメージ)
出典:各種情報に基づき筆者が作成。大型揚陸艦の図は中国海軍年鑑から引用
3.日本国土に接近した頻繁な軍事的威嚇
中国は軍事力を増強し近代化しているなかで、情報収集機を日本に接近させ、監視レーダーの能力とレーダーへの攻撃のための情報収集や潜水艦が通過できるように南西諸島の海峡や津軽海峡の海底の情報収集を頻繁にしている。
2隻の空母と同行する駆逐艦等が空母群を編成し、日本の経済水域内に侵入して行動している。それぞれの概要について、改めて解説する。
参照:JBpress「日本EEZ内への侵入を活発化させ、軍事的恫喝繰り返す中国の脅威」(2025.7.13)
(1)海軍測量艦が潜水艦戦のために日本南西諸島の海峡を頻繁に調査
中国測量艦は、中国の軍港を出港し、日本近海の経済水域、海峡、接続水域、そして領海にまで侵入し、情報を収集するため、海底の測量を頻繁に行っている。
これは、海底の実態を解明し、中国潜水艦の行動を容易にするための調査である。
図 潜水艦の行動に資する測量艦の海底調査(イメージ)
出典:各種資料に基づき筆者が作成したもの
(2)日本を一周して、レーダーなどの通信電子情報を盗むスパイ艦
海軍情報収集艦や情報収集機は、日本と中国の中間線を越え、日本の領空・領海まで接近、時には領海に侵入し、情報を収集している。
特に、情報収集艦は日本の領海ぎりぎりまで接近し、日本の全域を一周している。年に何度も繰り返し、また毎年実施している。
これは、中国の海洋からの電子戦そのものであり、いずれ戦争になれば、米軍空母を含む軍艦、日本の護衛艦、海自司令部を攻撃する対レーダーミサイル開発に利用される。
そして、このミサイルが日本のあらゆるレーダー施設に向かって飛んでくることになる。さらに、GPS信号が妨害される。
図 中国情報収集艦による日本接近と日本一周の動き
(3)中国軍のスパイ機が日本に頻繁に接近
中国軍のスパイ機である情報収集機が日本に頻繁に接近し、時には、領空を侵犯している。
この情報収集機は、シギント(電波情報)とエリント(通信電子情報)を収集できるアンテナと受信装置を付けたものがある。
シギント機は自衛隊や米軍の交信を傍受し、エリント機は両国軍のレーダーが放出する通信電子情報を収集している。
(4)台湾有事を想定した日本経済水域での中国空母の活動
中国空母が今年6月、日本の南鳥島や沖ノ鳥島の経済水域内を航行していた。中国の海軍高官は、「中国空母の行動は作戦行動だった」と明らかにした。
また、空母搭載の「J-15」戦闘機は、監視をしていた日本のP-3C哨戒機に特異で危険な接近飛行を行った。
(日本が経済水域内で監視行動を行うのは当然のことであり、我が国の防衛のために実施しなければならないことだ。また、哨戒機は規定に基づき実施している)
中国空母は、日本の経済水域まで入り込んで、軍事演習を行っているのである。
このことは、近い将来を見据え、日本近海での中国の空母による実際の作戦を想定しているということである。
