4.台湾周辺での軍事的行動と威嚇

 中国空軍機には、中国本土を発進し、①南シナ海方面からバシー海峡(台湾とフィリピン間の海峡)上空から台湾付近に接近して帰投、②東シナ海から南西諸島間の海峡上空、台湾に接近して帰投、③バシー海峡・台湾東側・南西諸島内の海峡の上空を飛行して帰投(この逆もある)、①②③に関連して、④日本の南西諸島東側から四国付近まで飛行して帰投するという動きがある。

 また、それらの回数は下の表のとおり、急激に増加している。

図 中国軍機の台湾と南西諸島周辺飛行

出典:日本統合幕僚監部と台湾国防部資料を筆者が図示したもの
拡大画像表示

グラフ:中国軍機台湾周辺飛行の回数(月毎)

出典:台湾国防部の日々資料を筆者がグラフにしたもの

 中国海軍は、特に2022年と2024年に、台湾周辺に航行制限海域を設定して演習を行い、台湾に対して海上封鎖を実施するような動きを行った。

 また、中国空軍機の活動と同様に、海軍艦艇など10~20隻程度が台湾周辺での威嚇活動を行っている。

5.日本周辺での軍事的行動と威嚇の意味

 中国軍の近代化と増強は、周辺地域や国、特に台湾や日本の脅威になっている。

 また、それらに伴って中国海空軍は、日本や台湾付近に進出して、軍事情報の収集を行うとともに、空母なども併せて進出して、威嚇している。

 そして、それらの動きは、増加しているのである。それらが意味するものは何か。

 日本や台湾、在日米軍の情報を収集するとともに、台湾侵攻を想定した演習を行っていると考えられる。その想定について、私は、次の図のようになるだろうと考えている。
 
 中国による台湾侵攻は、中国の東部戦区から台湾に直接正面攻撃を行うと思われがちだ。

 この作戦を実施した場合、中国がミサイル攻撃を行いつつ、幅が約200キロある台湾海峡を、正面から海軍艦艇、特に強襲揚陸艦が台湾に向かって渡洋してくれば、台湾軍が対艦ミサイルをそれらに撃ち込むことになるだろう。

 これらと同時に航空攻撃を行う場合でも、台湾軍の餌食となるのは明白だ。

 中国軍は、正面からの攻撃を行うと、艦艇や空軍機の被害が膨大なものとなるために、台湾の東側に回る迂回攻撃が主攻撃となるであろう。

 この場合、艦艇・空軍機は必ず日本の南西諸島を通過するし、空母群も同じ経路を通過して、南西諸島の東側などに進出するだろう。

図 中国が台湾に侵攻する場合の侵攻要領(イメージ)

出典:中国軍の軍事力、中国軍の活動の現状および戦略・戦術の合理性から筆者が作成したもの
拡大画像表示

 つまり、台湾有事になれば、日本、特に南西諸島が巻き込まれるのは必然である。

 日本としては、政府が存立危機事態、武力攻撃予測事態、武力攻撃事態をいつ、どの段階で発令するかが重要になる。