
ロシアのクルスク州で、北朝鮮兵が越境してきたウクライナ軍に攻撃を開始したのは、2024年11月中旬のことであった。
投入された兵は1万1000~1万2000人。それからわずか約2か月で、約半数に近い4000~5000人の死傷者を出した。
その後、北朝鮮兵は2025年1月上旬頃(細部不明)から参戦していなかったが、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の話では、2月7日、北朝鮮兵が再び戦場で交戦したという。
これだけの損失は、予想されたことなのか。
ロシアは、肉弾戦を実行するようになってから戦線全体で毎日約1000~1500人の損失を出している。
このことから、北朝鮮兵の戦闘参加2か月間で4000~5000人の損失というのは、ロシアからしてみれば当然のことかもしれない。
だが、北朝鮮からしてみれば北朝鮮軍の中では最も精鋭であり、映像を見る限り皆若者である。
金正恩総書記は、もっと顕著な成果を上げ、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の期待に応え、自慢できると思っていたはずだ。
それが、たったの2か月で約半数の損失を出し、戦いを継続することができなくなったのだ。
さらに多くの損失が出れば、増援を出して再編成するか、あるいは参戦していた部隊を一時休養させて、再び戦闘に参加させるかしなければならなくなる。
その判断は、プーチン氏と金正恩氏の政治的判断次第だろう。
最精鋭とみられていた北朝鮮特殊軍団(第11軍団、「暴風軍団」とも呼ばれる)等(捕虜になった兵士は「偵察大隊所属である」と自白している。軍団内の偵察大隊なのか偵察局の独立偵察大隊なのかは不明)は、ロシア軍ととともに戦ったがクルスク州を奪還できなかった。
いや、奪還どころかウクライナ軍の頑強な抵抗を受けている。金正恩氏や北朝鮮軍上層部が期待していた戦果を全く上げられなかった。
なぜ期待通りの戦果を得られなかったのか、なぜ多くの損失を出したのか――。
この点について、参加した部隊の種類、北朝鮮部隊の過去の訓練映像、ウクライナ軍参謀部が提供している戦闘場面の映像、後方の司令部が爆撃された映像などから考察する。