また、空自戦闘機による攻撃だけが報道されていましたが、海自のP-1やP-3が射程120キロを越えるハープーンを発射することも可能だったはずです。

 台湾本島上空の航空優勢が確保された空域を使用すれば、台湾海峡内の輸送艦に、自衛隊が対艦ミサイル攻撃を行うことは十分に可能と判断されるのです。

 もう一方の、空母を狙う場合を考えてみましょう。

 航空作戦の分類の一つに「対航空作戦」というものがあります。敵の航空作戦能力を破壊し、航空優勢を確保することで、他の航空作戦だけでなく、海上や地上での戦闘でも有利な戦闘を展開するために行います。

 さらに、この対航空作戦は、飛来する敵機を迎撃することで行う「防勢対航空」と、策源地となる敵基地や駐機中の航空機を破壊することで行う「攻勢対航空」に分けることができます。

 空母への攻撃は、当然攻勢対航空に分類される作戦なので、その目的は、中国軍の航空作戦能力を破壊することであるはずです。

 しかし、たとえ空母を撃沈できたとしても、中国の航空作戦能力の低下は限定的です。

 前述した通り、台湾海峡は狭く、沿岸だけでも多数ある基地は当然として、現代の航空機の航続性能を考えれば、数百キロ内陸の基地や香港近傍の基地からでも航空作戦を行うことが可能です。それら数十に及ぶ基地から航空作戦を継続することができるため、空母を沈めたところで台湾への航空脅威はほとんど減少しません。

 そもそも、空母の航空活動能力、特に侵攻作戦で重要となる同時多数機運用能力や再発進能力では、陸上基地に大きく劣ります。それが一つ欠けたところで、影響は軽微なのです。

 なお、本題と外れますが、空母の意義について説明しておきます。空母が優れるのは、戦力の投射能力、つまり遠く離れた場所で航空作戦を行うことができるという点です。中国は、アフリカなどにも権益を持とうとしていますが、そうした遠方にまで戦力を投射する上で、空母は他に代え難い能力を持っています。

 海自のヘリ搭載護衛艦の空母化についても、同じことです。海自の一部にも、ロマンを求めて空母保有を目指していた声はありましたが、基本的に政治主導で決められました。そうした政治家は、日本から遠く離れた土地に権益を持ちたいと考えていたのか、空母の本来の意義について無知なのかどちらかでしょう。