「指揮所演習(CPX)」とは仮想の状況下で指揮官や幕僚が作戦のシミュレーションを行う机上演習であり、作戦計画の検証目的での想定であることが一般的です(ただし例外もあります)。
もう一つは、演習参加部隊に高い訓練効果を与えることを主眼として設定される想定です。この場合は、必ずしも現実に生起するとは考えられない想定となります。実働演習では、少なからずこうした想定にせざるを得ません。
この二つは相反するものですが、ほとんどの場合、どちらかが100%ということはありません。
昨年のキーン・エッジは、かなり純度の高い計画検証を意図したものだったようです。そのため、この想定と演習参加者であるプレーヤーのアクションを分析することに大きな意味があるのです。
キーン・エッジにおける想定とアクション
報道されているキーン・エッジの想定とプレーヤーのアクションをまとめておきます。
(1)想定
・中国軍が台湾に侵攻する台湾有事
・2025年3月に任命された統合作戦司令官/司令部が存在
・中国軍が佐世保、岩国の米軍基地をミサイル攻撃
・与那国島に中国軍が上陸
・武力攻撃事態の認定は見送り、存立危機事態と認定
(2)とられた部隊のアクション
・米軍は自衛隊に対し、台湾海峡内の中国軍強襲艦隊を攻撃するよう要請
・自衛隊は要請を受け入れ、空自戦闘機が空対艦ミサイルで輸送艦を攻撃
・陸自は増援部隊を九州に派遣
(3)アクションに際して指揮所内で発生した動き
・自衛隊側には、台湾海峡の中国艦よりも中国軍空母の攻撃を優先すべきとの意見もあり
・中国軍の空母は攻撃対象として優先順位が低いと判断
・空港利用に関して、陸自部隊が搭乗する輸送機と空自戦闘機が競合(結論は不明)