そして、アインシュタインの光量子仮説に
野村:光が粒子であれば、そのエネルギーはとびとびです。1個の光が持つエネルギーを1とすると、2個の光のエネルギーは2、3個の光のエネルギーは3になります。光がそのような粒子的な性質を持つという前提にのっとって光電効果を解析すると、完璧に実験と合致する解が得られました。
アインシュタインは「振動数がνの光は、hνのエネルギーを持つ粒子のかたまりとして振る舞う」と提唱しました。これが、アインシュタインの「光量子仮説」です。アインシュタインは光が粒子であると考えないと理解できない現象があると主張したのです。
──光が粒子という考えはヤングの二重スリットの実験やマクスウェルの電磁気学に矛盾するのではないでしょうか。
野村:その通りです。アインシュタインの光量子仮説は「光は波として振る舞うこともあれば、粒子として振る舞うこともある」という考え方でした。
──今でも「光は波でもあり、粒子でもある」という言葉を耳にします。
野村:はい。しかし僕は、その言い方は少し誤解を招くのではないかと感じています。本当は「光は波でもなければ、粒子でもない」の方が良いのではないかと。ある条件下では波のようにふるまい、ある条件下では粒子のようにふるまう何かが光なのです。
波や粒子という概念自体、古典力学の概念です。「光は波か粒子か」という議論は、量子力学が誕生する以前からありました。当時は光を適切に表現する術がなかったのでしょう。
アインシュタインが光量子仮説を提唱して以降も、熱した物体から発せられる光や光電効果以外にも、ニュートン力学やマクスウェル方程式だけでは説明がつかない現象が次から次へと発見されました。この頃になると、原子の存在も明らかになり、その構造についての研究も進んでいきました。
イギリスで活躍した物理学者アーネスト・ラザフォードは、プラスの電荷を持つ陽子の周囲をマイナスの電荷をもった電子が回っているという原子の構造を実験から導き出しました。この原子構造は「ラザフォードの原子模型(以下、ラザフォード模型)」と呼ばれています。