マクスウェルが唱えた電磁気学とは?
野村:磁石が動くと、電流が流れます。現代では、この現象は発電に使用されています。水車に磁石をつければ水力発電、ボイラーでタービンを回しているところに磁石をつければ火力発電ができます。その逆に、電流が流れる、つまり電気の分布に変化が生じると、磁力が生じるという現象が知られています。
これらの現象を統一的に記述する式が「マクスウェルの方程式」で、これにより電磁気の理論が完成しました。そして、この方程式を解くと、磁気と電気の現象が互いに互いを生じさせながら、波のように伝わっていく解が得られたのです。これを、電磁波といいます。
やがて、電磁波の速度は光の速度と完全に一致することがわかり、電磁波こそ光であるということが明らかになりました。光は、電磁波の一種なのです。このようないきさつから、19世紀半ば頃、光は粒子ではなく波であると、多くの物理学者が信じるようになりました。
──結局、光の正体は波だったということでしょうか。
野村:イエスとも言えますし、ノーとも言えます。
「光=波」説に一石を投じたのは、ドイツの物理学者マックス・プランクでした。当時のドイツは製鉄業が盛んで、高品質の鉄を得るために溶鉱炉内の鉄の温度を緻密に制御する技術が必要とされていました。
そこでプランクは、熱した物体とそこから発せられる光の関係性から、物体の温度を正確に割り出す研究を始めました。
温度は物体を構成する原子の運動エネルギーです。そこで、プランクはニュートン力学で原子の運動エネルギーを算出しました。加えて、光は波であるという前提にのっとって、マクスウェル方程式を用いて熱い物体から発せられる光の波長も求めました。
この結果は、実験による観測結果と、違ったものであることが明らかになりました。「ちょっとずれている」程度ではなく、全く合わなかったのです。