「国民健康保険料が高すぎる」という声に厚労省はどう答える?(写真:共同通信社)「国民健康保険料が高すぎる」という声に厚労省はどう答える?(写真:共同通信社)

 毎年6月、国民健康保険の支払い通知書が届くと、見てはいけないものを見てしまったような気持ちに襲われる。2、3日触らず、半ば心の準備をして中を開くと、「うおっ」と思わず唸り、内臓のどこかがぎゅっと縮まる。

「なぜこんなに高いのか」「これ計算間違ってるだろぉ……」と言葉が空しく頭の中を駆けめぐる。はたして本当に、この許しがたい金額を払い続けるしかないのか。『国民健康保険料が高すぎる! 保険料を下げる10のこと』(中央公論新社)を上梓したジャーナリストの笹井恵里子氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

医療費が圧倒的に高い国保

──どんな思いがあって、本書をお書きになったのでしょうか?

笹井恵里子氏(以下、笹井):とにかく「国民健康保険料が高すぎる」という怒りの気持ちがあり、この本を書きました。令和3年度の私の国保料が、所得600万円に対して、88万円でした(この料金は個々の加入者の状況や住んでいる地域によって変わる)。88万円なんて、数カ月分の収入ですよ。

 2016年に「保育園落ちた日本死ね!!!」という、子どもを保育園に入所させることができなかった母親の怒りのブログが話題になりましたが、それに近いものがあります。待機児童問題の行きつく先は少子化問題だと思いますが、国民健康保険料が高くて払えないという問題の行きつく先は国民皆保険制度の崩壊です。

──この本を読むと、勤め人が独立をためらう大きな理由の一つに保険があるという印象を受けます。

笹井:以下の図にあるように、勤め人が入っているのは、社会保険(組合健保、協会けんぽ、共済組合かのいずれか)です。法人を離れた多くの人が入るのは、都道府県・市町村が運営する国保です。後者は前者と比べるとかなり高い。

 よく勤め人とそうでない人の保険の違いは「事業主負担があるかないか」だと言われます。「会社員であれば、会社が半分保険料の支払いを負担する」「だから、会社を辞めると保険料の支払額は二倍になる」と言われますが、この認識は正しくありません。

 国保は、その分、他の保険や国からの支援を受けているので、そのように単純な計算はできません。国保は加入者が使っている医療費が圧倒的に高い。そのため、加入者がそれを分けて払う時の負担額が高くなってしまうのです。

 大企業にお勤めの方などは組合健保に加入していますが、年間平均医療費はおよそ18万円、協会けんぽだと20万円、共済組合だと16万円です。これに対して、都道府県・市町村が運営する国保は36万円です。60歳から74歳までの医療をよく使う層の加入率が高く、それを若い現役世代が負担している状況です。