ECTとrTMSの1回当たりの費用

鬼頭:ECTは1回3万7000円です。基本的に、ECTの施術は入院で行うことが多く、自立支援医療制度(※)の対象外です。先ほどお話ししたようにECTは12回から18回の施術が一般的ですので、40万円から70万円程度かかると思ってください。

※精神疾患や身体障害などの障害者が必要な医療を継続して受けられるように、医療費の自己負担を軽減する制度。入院は対象外で外来のみが対象となる。

 一方、rTMSは1回あたり2万円です。30回の施術で60万円かかります。

──かなり高額な治療だという印象を受けました。

鬼頭:高額療養費制度がありますので、治療費を患者が全額負担することはないでしょう。

 高額療養費制度は年齢や所得によって自己負担額の上限が異なります。rTMSやECTの治療負担額がいくらかかるかは、一概には言えませんが、高額療養費制度を利用することを検討してみてください。

──それに応じて、国や自治体側の医療経済的な負担が大きくなるのではないのでしょうか。

鬼頭:rTMSを使用した場合と使用せずに抗うつ剤だけで治療を行った場合、医療経済的にどのような差が生じるのか調査した研究があります。

 この研究では、抗うつ剤が効かずに症状が遷延して入院期間が延びるよりも、rTMSに切り替えたほうが経済的なベネフィットがあると結論づけています。

──現時点でのrTMS、ECTの課題について教えてください。

鬼頭:現在の日本では、rTMSは週5日、6週間から8週間までの30回の実施はすべて保険でカバーできます。けれども、30回以降の治療は保険収載されていません。

 薬が効かずにrTMSを受けて寛解した患者が、再燃・再発予防をするための維持療法としてrTMSを続けることができない状況です。