師と仰ぐ田中角栄の教え「弱い人のために政治がある」はどこへ?
改めて首相の存在感について考えてみたい。戦後の内閣総理大臣で在職期間の長いトップ5は次の通りだ(敬称略)。
① 安倍晋三/3188日
② 佐藤栄作/2798日
③ 吉田茂/2616日
④ 小泉純一郎/1980日
⑤ 中曽根康弘/1806日
小泉以降の総理大臣は、安倍、岸田以外はいずれも短命だ。福田康夫365日、麻生太郎358日、鳩山由紀夫266日、菅直人452日、野田佳彦482日、菅義偉384日、岸田文雄1095日、そして石破首相は3月20日時点で171日だ(2024年10月1日就任)。
実績らしい実績が見当たらない岸田前首相の在職期間が1000日を超えていたとは意外だ。自民党内の事情で何とか総裁任期を全うできたのだが、続投はかなわなかった。ここへきて岸田氏についても総理在任中の2022年に政務官に商品券を配布していたことが発覚した。党内基盤が盤石でない状況下でシンパを増やそうとしたのだろうか。
他の総理経験者は旧民主党を含め1年半さえ持たずに交代している。これでは歴史に名を残すような業績はとてもじゃないが期待できない。トップ5人には毀誉褒貶はあれど、それぞれに明確なイメージがある。アベノミクス、沖縄返還、サンフランシスコ平和条約、郵政民営化、中曽根民活……。
そして石破首相が政治の師と仰ぐ田中角栄は在職期間886日で、日本列島改造論と金権政治がこの政治家の代名詞となった。石破首相は2018年7月、角栄の勧めで国会議員となって33年目の日に新潟県内の支部の記念式典、柏崎市にある田中角栄記念館や生家を訪れ、報道各社の取材に「最後の弟子」としての思いを口にする中で、師から贈られた色紙を紹介していた。
〈末ついに 海となるべき山水も しばし木の葉の 下くぐるなり〉
9月に控えた総裁選を前に、何度も挑戦を続ける自身の身を重ねたのだろう。その上で「まだ角栄先生の期待に応えられていない」点を強調していた。


さらに支部の記念式典でのあいさつなどで、
「田中先生は常に弱い人のために、恵まれない人のために、そう思って政治をやってこられた。私は地方をベースとすることは日本全体を考えること。弱い人、つらい人のために政治はあると思っている。そこは田中先生から何分の一かでも学ばなくてはならないと思っている」
と自身の政治への思いを訴えかけていた。ここに石破政治の原点があるように思えたのだが、総理就任以降の言動を見ていると「期待外れ」としか言いようがない。
