前線の医療基地から救急車に乗せられ後方に送られるウクライナ軍の負傷兵(7月27日、写真:ロイター/アフロ)

 ウクライナ戦争はロシア軍の攻勢が始まり最終局面を迎えている。

 半面、ウクライナ軍を支援してきた米軍はじめNATO(北大西洋条約機構)は装備と弾薬が枯渇しかかっており、北東アジア有事の米軍の支援能力にも制約を及ぼしている。

反転攻勢失敗とロシア軍の本格攻勢開始

 泥濘期明けから始まったロシア軍の攻勢に対し、ウクライナ軍は6月4日頃から反転攻勢をかけ、2週間あまりが経過した。

 しかしウクライナ軍は、弾量も火砲数も約10倍と言われる優勢なロシア軍の火力と堅固な陣地帯に阻まれ、攻撃戦力を消耗している。

 退役米陸軍大佐のダグラス・マグレガー氏は、ウクライナ軍の累積戦死者数を約30万~35万人、戦傷者等を合わせた損耗は約60万~80万人に達したと見積もっている。

 ウクライナ軍の6月の攻勢開始時点の基幹戦力は、約3万~3.5万人のNATO加盟国で訓練された兵員であり、総兵力は約20個旅団、約6万人とされていた。

 しかし、攻勢開始以降その約半数が死傷し、7月中旬には約10個旅団、3万~3.5万人に減少したとみられている。

 ロシア軍の戦力は圧倒的に優勢である。

 ロシア軍の総兵力は約75万人、そのうち各約10万人の兵力が、南部のザポリージャ正面、バフムト以南の東部ドンバス正面、バフムトより北の東部ドンバスのリマン正面に展開され、ベラルーシにも約10万人が集結中とみられている。

 その他にロシア領内も含めて約三十数万人が展開している。

 ロシア軍は、戦車1800両、装甲車3950両、火砲2700門、戦闘機400機、ヘリ300機などを準備していると『フォーリン・アフェアーズ』は報じている。

 英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)はロシア軍の戦術・戦法について、今年3月19日付で詳細な報告書を出している。以下は、同報告に基づいている。

 ロシア軍の陣地帯は、工兵部隊により機械力を利用して、昨年来組織的に建設されており、現在のウクライナ軍とロシア軍の接触線後方約7~8キロ付近の地線に、全正面約1000キロにわたり、少なくとも1線、南部正面などでは3線にわたり構築されている。