日本のSLBM保有は中国・ロシアの脅威に対抗する一つの解決策だ(写真は佐世保港に停泊する米攻撃型原潜「アッシュビル」、6月1日撮影、米海軍のサイトより)

 核時代の今日、真の大国と言えるのは、核保有国のみである――。

 なぜなら、核をもたない国は、国家の存続の基本を他国の核抑止力に依存するか、核保有国からの核脅威に一方的に曝され、恫喝を受ければ屈するしかないためである。

 我が国は唯一の被爆国であるが、核不拡散条約(NPT)を批准し、核抑止力を米国に全面的に依存するという政策を採ってきた。

 米国の拡大核抑止に依存するのであれば、その信頼性について、客観的合理的に各種要因に基づき分析検討しなければならない。このことは、わが国の安全保障の根幹に関わる、死活的に重要な課題である。

 以下では、拡大核抑止の信頼性を左右する主要な要因である

①理論面からみた拡大核抑止における抑止力提供国の防御国と、抑止の提供を受ける被保護国との根本的な国益上の対立

②米国と潜在的な敵性国との核戦力バランス

③米国と敵性国の核兵器インフラの現状と核兵器運搬手段の趨勢

④ミサイル防衛システムの極超音速ミサイル撃墜能力について分析する。

 最後に、日本が核保有する必要性とその在り方について述べる。

理論面からみた防御国と被保護国との国益上の利害対立

 核戦争の危機が迫った段階では、被保護国(日本)は、防御国(米国)に対し、防御国自らが核戦争に巻き込まれるリスクを犯してでも、誓約通り、核の傘を提供することを要求し、挑戦国(中朝ロ)の核恫喝に屈することなく自衛戦争も辞さないであろう。

 それに対し防御国は、究極的には、挑戦国との核戦争へのエスカレーションを恐れて、被保護国が挑戦国に譲歩するように強いて、戦争を回避することが死活的国益となる。

 すなわち、防御国も被保護国も自国の存立を問われる危機に直面すれば、どちらも自国の安全と存続を最優先するため、そこに決定的な国益の対立が生ずることを意味している。

 言い換えれば、拡大核抑止は理論的原理的に成り立たず、「自国を守るため以外に、核兵器を使用する核保有国はない」ことになる。

 このことは、スエズ動乱などの史実でも実証されている。