岸田文雄首相は、今後5年以内に日本の防衛費を抜本的に増額すると表明している。
今後、防衛費が増額されるとしても、その潜在的可能性に関して、防衛のみならず経済、技術、情報、外交など多面的な分析が必要である。
成長産業の中核になりうる
防衛産業の潜在的成長力、雇用吸収力
防衛産業は雇用吸収力が高く、乗数効果の大きく作用する分野である。
サービス産業などは、大きな生産性向上は期待しにくく、雇用吸収力はあっても低賃金にとどまる。
防衛産業は先端技術の塊であり、世界最高の技術水準を要求し国がリスクをとるため技術開発によるブレークスルーが最も起こりやすい。そのため飛躍的な生産性の向上が見込まれる。
技術者についても、官民を含め安定的に豊富な研究開発資金が保証されるため、リスクのある先端分野にも思い切った挑戦がしやすくなる。
この点は、基礎科学の分野でも同様であり、欧米でも安全保障上の要求に基づく先端的な基礎研究への予算配分が潤沢に行われている。
防衛産業は、戦車には1000社が関わると言われるほど、多くの中小企業が関連する分野でもあり、中小企業も含めたすそ野の幅広い分野であり、雇用吸収力も大きく、中小企業の雇用拡大や賃金上昇にもつながる。
また防衛産業は他の民生分野と競合するおそれがなく、民業圧迫にならない。地方の中小企業の活性化、雇用拡大、地域振興にもつながる。
中でも古来、朝鮮半島、南西諸島方面は日本にとり、軍事政略上の最重要正面だった。
これに対処するため、平時から近畿を拠点とし、瀬戸内海の海運を補給路とし、北部九州と西部九州地区に前進拠点を構築してきた。
この伝統は、天智天皇の時代の水城、元寇、秀吉の朝鮮出兵、日清・日露戦争、第2次大戦、朝鮮戦争でもみられた。
現代も今後の南西諸島有事、半島有事に備え、これら西日本の兵站拠点と補給路の整備に努めておく必要がある。
また、先島諸島と対馬、道北には必要な装備品・ミサイル・弾薬の地下備蓄施設を整備すべきである。これらの整備は関係地域のインフラ建設需要喚起にもなる。