(写真:アフロ)

テレビドラマの中で、さりげなく商品を映し出す「プロダクトプレイスメント」など、宣伝とはわかりにくい形で、こっそりとスポンサー企業の商品を宣伝する機会が増えている。これは「放送法」や民放連の「放送基準」の趣旨に矛盾していないだろうか。そして、ステマ規制に関わる問題でもある。テレビ関係者は、宣伝偏重にならず、放送の意義や本質を見据えて、公共の電波の重みを大事にするべきである

(岡部 隆明:就職コンサルタント、元テレビ朝日人事部長)

ドラマの会議シーンで机に置かれたペットボトル

 前回の当コラム「これはCM?ドラマ仕立てのテレビCMは放送法の趣旨に反していないのか」で、CMとはわかりにくい「ドラマ仕立てのCM」は放送法に触れかねないのではないかと指摘しました。そして、放送局と広告会社とスポンサーが三位一体となって利益を追求し、視聴者が置き去りにされてしまう構造について懸念を示しました。

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これはCM?ドラマ仕立てのテレビCMは放送法の趣旨に反していないのか
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 この構造はCMだけではありません。番組の中でも、よく見られる光景です。視聴者に「宣伝とわからない」ように宣伝しながら、スポンサーにメリットをもたらす手法が広まっています。今回は、具体的な事象を取り上げながら、問題点について論じてみたいと思います。

 7月から始まった、あるドラマの会議のシーンです。20人ほどが集まった会議室で机の上に同じミネラルウォーターのペットボトルが人数分、置かれていました。私はすぐに、ある飲料メーカーの商品だとわかりました。

 ドラマを見ていて、この飲料水に気づいた人は多いのではないでしょうか。さりげないようでいて、多くの視聴者に気づいてもらわないと、わざわざ机に商品を置いた意味がないからです。

 この飲料水は、ドラマに90秒のCM(30秒CMが3本)を提供しているスポンサーの商品でした。スポンサーとしては、CMだけでなくドラマの本編でも「宣伝」してもらえ、放送局はスポンサーに恩を売ることができます。そこに、放送局から手数料収入を得る広告会社が介在して、三者の共存共栄の関係が成立しています。

 テレビ番組や映画の中に商品を置いて、視聴者に「広告と意識させることなく」宣伝効果を期待する手法を「プロダクトプレイスメント」と言います。これは映像メディアの商業主義の進化形として、以前から実践されてきました。