採用選考が解禁になるころ就活はすでに終盤というのは公然の秘密(写真:森田直樹/アフロ)

(岡部 隆明:就職コンサルタント、元テレビ朝日人事部長)

採用選考を解禁した瞬間、内定率は7割に

 政府が企業に求める「採用ルール」に基づいて、6月1日に来春(2023年)入社の大学生・大学院生の採用選考が解禁になりました。それからまだひと月足らずですが、就職活動は大方一段落しているでしょう。

 もはや公然の秘密ですが、解禁をきっかけにして面接などの採用活動が本格化すると思いきや、すぐに終盤戦を迎えます。というのも、解禁日までに「内々定」を持っている学生は7割くらいいるからです(下記グラフ、リクルート「就職プロセス調査 2023年卒」より)。

6月12日時点の就職内定率は76.5%。グラフはリクルートの就職・採用関連の研究機関「就職みらい研究所」がまとめた「就職プロセス調査(2023年卒) 2022年6月12日時点 内定状況」から
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 解禁は選考を始める号砲というよりは、「内々定」を固める合図になっています。政府の「採用ルール」では10月1日が「内定」の解禁日と定められているので、あえて「内定」ではなく「内々定」と表現していますが、実質は「内定」です。

 企業はルールを守っているふりをしながら、優秀な学生を囲い込むのに躍起です。守るはずがありません。罰則もなく、遵守していると出遅れるばかりで何のメリットもないからです。ルールが形骸化していることは周知の事実なのに、誰も改めようとしません。こんなじれったく、もどかしいルールは廃止するべきです。

 私は昨秋、30年間勤めたテレビ朝日を退職しました。社歴の半分は人事部で、人事部長を7年間務めました。人事全般の施策に携わり、新卒採用にも注力してきました。これからは、コンサルタントとして学生向けに就職の支援をしたいと考えています。

 私の社会人生活はバブル経済崩壊後の「失われた30年」と符合します。その中で、あれこれと思いを巡らせてきました。連載では人事全般について思うところをお話ししていきます。

 それでは、今回のテーマである「採用ルール」に話を戻しましょう。