東大卒は本当に優秀なのか――。高学歴の学生は企業の期待度が高く、就職活動でも有利だというのが“一般常識”だろう。かつてソニー(現ソニーグループ)が「学歴不問採用」を打ち出したが、いまだに企業社会には学歴や出身校がものをいう風土が残っている。テレビ朝日で人事部長を務め、現在は就職コンサルタントとして活動する筆者が、自らの体験を基に「学歴フィルター」の根深さを指摘する。
(岡部 隆明:就職コンサルタント、元テレビ朝日人事部長)
前回(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70720)は、お上が決める「採用ルール」のおかしさを指摘しました。今回は企業やビジネスパーソンの間で根強く残る学歴信仰について取り上げます。
受験戦争では、より高い偏差値の大学に合格した者が勝者であることは否定できません。受験戦争の勝者は社会に出てからも勝者でありたい、勝者でなければならないというのが学歴信仰です。そして、勝者は高い学力を持っており、仕事上でその能力が発揮され、大きな成果を生むはずだというのが、この信仰の教典です。
少し前になりますが、昨年12月、就職情報会社のマイナビが、ある企業のインターンシップを紹介するメールのタイトルに「大東亜以下」と記したまま学生に送りました。これが主にSNS上で物議を醸しました。
「大東亜」は「大東亜帝国」とも呼ばれます。大東文化、東海、亜細亜、帝京、国士舘という5大学の頭文字を取ったものです。偏差値レベルで私立大学をグループ化した1つです。
「大東亜以下」というメールを受け取った学生から、「学歴フィルターを設けているのではないか?」という疑念が沸き上がりました。これに対してマイナビは「学歴差別を行う意図はない」として謝罪し、学歴フィルターの設定についても否定するという騒動がありました。
企業が採用活動において、学生を学歴や所属大学の入試偏差値によって“ふるい”にかけることを学歴フィルターと言います。それらが低い学生は会社説明会やセミナーに呼ばないとか、エントリーシートを読まずに落とすといった差別的行為です。
もちろん実態は不明です。こうした行為は法律に触れているわけでもなく、企業も「学歴フィルターを使っています」と公にはしないからです。したがって、どれくらいの数の企業が採用選考で学歴フィルターを用いているかはわかりません。